この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第68巻収録。CIAはソ連の元副首相クレメールを亡命させるため、クレメールの影武者を作りあげる計画を実行。影武者として白羽の矢がたったダハンは、イスラエルへ強制送還すると脅され、渋々了承する。クレメール暗殺の依頼をうけたゴルゴは、影武者のダハンをみて“ある相違点”を発見する……。脚本:北鏡太
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他人のそら似が招いた不運
ダハンはまったくもって不運な人間である。俗説では、この世には自分に似た人間が3人いると言われているが、血縁はどこでどんな形でつながっているかわからないから、当たり前といえはそうかもしれない。
ソ連の大物政治家クレメールに瓜二つという理由で誘拐され、CIAに協力せざるを得なくなったダハンの「あたしがつかまったらどうしてくれるんだい」の問いに「そんなことは絶対にならん」とシムズが答えているが、その答えには「だってお前は役目を終えたらあの世行きだから」という言葉が省略されているのをダハンはわかっていない。

なくて七癖、人は自分のことは判らない
『ラオスのけし』や『帰って来た標的』など替え玉関連のテーマも、ゴルゴシリーズの定番だが、このジャンルの楽しみは「間違い探し」だ。替え玉と実物との違いは何か、ゴルゴは果たしてそれをどう見破るのかが最大の注目点だが、今回は比較的シンプルな設定となっている。
シムズは替え玉ダハンに所作を指導するが、自分の能力に絶対の自信を持ち、ダハンを見下しているシムズは、ダハンの些細な指摘を無視し、作戦は失敗に終わる。それにしても、ダハンにさえ気づかれる、標的を撃ってください、といわんばかりの露骨な無防備にはあきれる。
性格の善し悪しは仕事にも反映する
シムズのように性格の悪い人間は、人の命を簡単に使い捨てる安直な作戦を思いつくものの詰めが甘い。ゴルゴに替え玉を見破られ、見事一敗地にまみれたシムズは『ソフホーズ』で、個人的な怨恨をはらすべく無謀にもゴルゴに報復を試みる。
CIAのエージェントは決してIQが低くない、むしろ高い方だと思われるが、不思議なことに、時々『デリートG Gの消去』のグローバーのように頭の使いどころを間違えて、文字通り墓穴を掘る人間が現れる。末路は言わずと知れた返り討ちであり、自業自得の看板を背負って地獄へ堕ちていくのである。

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野原 圭

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