この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第30巻収録。デューク・東郷本人が出演するセミ・ドキュメンタリー映画を製作し、全世界に公開する事で、大衆をゴルゴの監視役にしてしまう奇想天外なアイディア。なにも知らずに映画の監督に抜擢されたエリックは、ポルノ女優を使いゴルゴに殺人の依頼を行わせるが……。脚本:大浦良平
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かくもつらく危ない職業・映画監督
ある美術家が若者から「美術で生きるのに必要なことは」と問われ「貧乏する覚悟」と答えている。好きなことで生きて行くのはなまなかな覚悟では難しい。映画監督もその中のひとつだろう。映画監督・片淵須直は「この世界の片隅に」が大ヒットするまで極貧の生活を送っていたということだ。
賞をもらった映画監督は皆「これで銀行から金を借りられる」というらしい。売れない映画監督・エリックが制作費無制限、世界中に配給保証という条件に飛びつく理由もよくわかる。が、当然ながらうまい話には裏があり、それはあまりに危険な裏だった。

ゴルゴの後ろに座ることを許された女
薬師丸ひろ子は10代の少女役時代、監督の相米慎二から「ちゃんとやれガキ、お前のせいでフィルムがムダになった。ギャラからさっ引くぞ」と棒でつつかれながら撮影していたという。今なら児童虐待だが、華やかに見えても、女優もなかなかつらい職業である。
ジーンも、一度ついてしまったポルノ女優という色を取り去るのに苦労している。驚いたのはゴルゴのタクシー運転手姿であり「俺の後ろに立つな」と背後を取られることを極端に警戒するのに女を後ろに座らせていることである。もちろんいざというときの備えはしているのだろうが。
撮影が終わる頃、誰もいなくなった
結局、撮影に関わった主な人間は皆消えてしまった。『ダブル・ミーニング』にもあるように、映画産業と政府機関の結びつきはきわめて不気味なものがある。企画者がその後、無事でいられたかどうかは定かではないが、今回、映画によってゴルゴを大衆に監視させるというのは、かなり大胆だが有効なアイデアではあった。
唯一ゴルゴが関わったのは『ボリバルII世暗殺計画』で制作された映画で、クライマックスシーンにゴルゴの実弾が出演している。ゴルゴ本人が出演したこの未完成ドキュメンタリー映画もみてみたかったので少々残念ではある

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野原 圭

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