この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第7巻収録。莫大な遺産を受け継いだトルヒーヨ。彼は財産家であるがゆえに、人生に対する充実感を感じることができずにいた。生死を賭けた一瞬の攻防に人生の価値を見出そうとしたトルヒーヨは、自分に瓜二つの精巧な人形をゴルゴに狙撃させ、自分は死んだ事にした上で、第二の人生を歩みだそうと企図するが……。脚本:森幸太郎
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ゴルゴの筋肉美、再び
ゴルゴはどんな困難な依頼をも達成するために日々、トレーニングを怠らないのは周知の事実だろう。『殺意の交差』でも銃を撃つための特殊な訓練であると暗に指摘されている。本作でもターゲットから感嘆の声があがるほどで、普通のトレーニングではないと語られている事から明らかだ。
そんな努力家のゴルゴは『仮面の標的』に似たシチュエーション、つまり狙撃対トリックの勝負に挑むこととなる。トルヒーヨは愛人ですら本人と勘違いするほど精巧に作られたターゲットの人形を作成し、ゴルゴにトリックを仕掛ける。はたしてゴルゴはトリックを見破り狙撃を成功させることが出来るのか。

金持ちの狂気に振り回されるセラーノ
本作で注目したい人物は二人いる。大金持ちのトルヒーヨ二世と、詐欺・横領で収監され、このたび保釈されたセラーノである。トルヒーヨ二世は闘牛の写真を見てマタドールに挑戦するのかと思いきや、何故か自身を殺し屋に狙わせるゲームを思いつく狂った発想の持ち主だ。その思い付きのシーンの前で周りの人間が語る“彼に残されていることは自殺だけ”というのもあながち間違いではないのだろう。
そしてその狂ったゲームに付き合わされるのが本作のメインキャスト、セラーノである。殺し屋としてゴルゴをチョイスし、さらにはトルヒーヨ二世の執事を裏切らせるなど盤石な体制を敷くセラーノ。この二人がどのような結末を迎えるのかが本作最大のみどころと言えるだろう。
細かい演出にニヤリ
本作の物語は笑えるポイントが随所に散りばめられている。トルヒーヨ二世を紹介したかと思えば、次のジムのコマでは何の脈絡もなくゴルゴが一般大衆に紛れてトレーニングしていたりする。しかも『殺意の交差』で明らかに目立つ描かれ方をされていたのとは対照的に、じつに地味な描かれ方をしている。にも拘わらず存在感抜群なのは思わずツッコミを入れたくなる構図である。
またセラーノが殺し屋を募集するシーンでは、孤児院がゴルゴの橋渡しを請け負っている点もギャップにやられること間違いなしだ。更に情報料を支払った後、それとは別と言わんばかりに寄付をねだってくるエゴータ夫人など、クスリと笑ってしまう演出がさすがだ。ストーリー展開に関しても、セラーノがゴルゴを雇えた時点で勝てると思いきやとんでもない展開が待ち受けているため、最後まで飽きさせない作品となっている。

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小摩木 佑輔

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