この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第42巻収録。象牙の密猟が原因で絶滅の危機に瀕するアフリカ象。組織的な密猟組織が暗躍していると断定したWWF(世界野生動物保護基金)は、密猟組織と密猟ルートの壊滅をゴルゴに依頼する。敵の大将・キャラン大佐を陥れるため、ゴルゴは華僑に扮し象牙取引を持ちかける……。脚本:きむらはじめ
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なぜか敵のボスに自ら手を下さないゴルゴ
今回の依頼は象牙密猟組織の壊滅であり、ゴルゴは例によって八面六臂の活躍を見せる。だが密猟のリーダーであるキャラン大佐には、なぜか自ら手を下さない。もちろん彼は見逃されたわけではなく、もっと回りくどく冷酷なやり方で報いを受けることになるのだが……。
ゴルゴがそんな方法を選んだ理由は、密猟ルートがもう使い物にならないことを買い手の華僑にも分からせる必要があったからだろう。依頼はあくまで密猟の壊滅であり、大佐の殺害ではない。ゴルゴにとっての依頼遂行とは、必ずしも彼が敵を直接殺すことを意味しないのだ。
華僑への変装もばっちりハマる演技力
必要に応じて様々な姿や身分に変装してみせるゴルゴ。今回は華僑の象牙バイヤーを装って密猟組織に接触するが、ホテルのシーンで1ページだけ登場する黒いチャイナ服が印象的。『チャイナ・タウン』でも台湾人に扮したことがあったが、やはり東洋系の格好がバッチリ決まる。
もっとも格好以上に彼の変装を成り立たせているのは、今回のような悪党でも容易く演じてしまう演技力と舞台度胸だろう。作中、象牙の取引について大佐とやりとりする彼の振る舞いは実に堂々としていて、読者はゴルゴだとわかっているのに騙されそうになってしまう。
現代の日本人にも無縁ではない象牙の問題
ちなみに象牙の密輸は現代でも根絶されておらず、つい最近(2020年1月)も成田空港からラオスへ象牙を密輸出しようとした容疑で逮捕者が出ている。日本国内での象牙取引は合法だが、象牙が違法とされている国へ日本から象牙を密輸出して荒稼ぎしようとする悪巧みは跡を絶たないのだ。
そしてIT技術の進歩に逆行するように、日本では令和の時代になっても印鑑文化の衰える気配がなく、日々多くの象牙が印鑑に加工されている。今回のエピソードで描かれるような象たちの悲劇は、私達日本人にとって決して他人事ではないのである。
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東郷 嘉博
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