この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第42巻収録。海運王オケアノスに殺された娘の仇を討つべく、母親のサロニカは全財産をかけてオケアノス暗殺を依頼する。しかしオケアノスの圧倒的な戦力の前にゴルゴも苦戦。最後は意地のタンカー購入でオケアノスの度肝を抜く。華麗なゴルゴの購入履歴のなかでも、特に高価な買い物が描かれた一編。脚本:きむらはじめ
スポンサーリンク
「その言葉が聞きたかった」ではないが……
時として手塚治虫の『ブラック・ジャック』と対比されることもある『ゴルゴ13』。かの闇医者が、時に破格の安値で手術を引き受けることがあるのと同様に、ゴルゴも依頼人の事情や境遇によっては相場よりも遥かに安い報酬で仕事を受けるケースがある。
今回の依頼人はギリシャの片田舎に住む老女で、報酬は90万ドラクマ。別のページで200ドラクマ=2千円とあるので、90万ドラクマは900万円。仕事に私情を挟まないゴルゴだが、老い先短い老女(しかも依頼の直後に自殺してしまう)の最後の願いを安値で聞き遂げる姿はなんとも心強い。
いかなる依頼でも必要経費を惜しまない
老女のなけなしの90万ドラクマで仕事を引き受けたのはいいが、今回の標的は軍船やヘリなどの私有軍備を擁する海運王。この難敵の攻略のため、ゴルゴは重油を積載したタンカーを丸ごと一隻購入して突撃を図る。必要経費を惜しまないゴルゴの仕事歴の中でも、特に原価割れも甚だしいエピソードだ。
報酬がいくらであっても依頼は依頼だという彼のスタンスを感じさせるが、これもブラック・ジャックが私財をなげうって恩人の元に駆けつけ、病院をも買い取って手術をする名エピソード『助け合い』とどこか通じる部分があるような、ないような。
海運王を殺したのは貧しい老女の恨み一つ
『ゴルゴ13』の世界ではゴルゴに狙われたらまず助からない。この世界で長く悪党を続けるためには、ゴルゴの標的に入らないように立ち回ることが肝要と言っても過言ではない。しかし今回の標的は個人で核を装備して世界を恐れさせるほどの大物だ。
そんな彼の始末をゴルゴに依頼するのは、大国の諜報機関でも何でもなく、娘を奪われた恨みに燃える老女一人である。彼からすれば、そんな老女が自分の命運を決定するなど夢にも思わなかっただろう。人間、どこで恨みを買っているかわからないもの。結局、ゴルゴを回避する手段などないということか。
この作品が読める書籍はこちら
東郷 嘉博
最新記事 by 東郷 嘉博 (全て見る)
- ゴルゴ13:第536話『神の鉄槌』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第552話『受難の帰日』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第535話『森と湖の国の銃』のみどころ - 2024年9月19日