この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第55巻収録。ハーレムではサタデーナイト・スペシャルと呼ばれる安物拳銃による犯罪が多発し、社会問題化していた。一方、依頼主との会見場所を下見に訪れたゴルゴは、街のチンピラによる銃殺事件に巻き込まれる。犯人たちは目撃者であるゴルゴを消すため追跡を開始するが……。脚本:北鏡太
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ガラクタ銃が50ドルから買える国
「サタデーナイト・スペシャル」とは、北米で流通している安価で低品質な拳銃のこと。1960年代のアメリカではこうしたガラクタ銃による殺傷事件が頻発しており、それが土曜の夜に起きることが多かったために、医師達が揶揄して呼び始めたのが由来だという。
その性能は「安かろう悪かろう」を地で行くもので、命中率の悪さ、動作不良や暴発の危険性など多くの欠点があるが、それでも低所得者層を中心に現在でも使われているそうだ。ゴルゴへの高額依頼が21世紀になっても絶えないように、安物にも安物なりの需要が常にあるということか。
安拳銃に始まり安拳銃に終わる名短編
本話の前半では、ハーレムのチンピラであるサンチェスの受難が描かれ、このパッとしない若者が今回の狂言回し役なのかと思わされる。しかし、彼は途中で別のチンピラ・ジョーにあっけなく撃ち殺されてしまい、以降はジョー達の一味がゴルゴと対峙するのだ。
短いページ数の中で視点人物がコロっと入れ替わってしまうという珍しい作りだが、本話のタイトルを思い出しながらよくよく見てみると、全編にわたってチンピラ達の安物拳銃が物語を動かしていることがわかる。なるほど、今回の主役はまさに「サタデーナイト・スペシャル」だったというわけだ。
殺人者の鉄則をチンピラに教えてやるゴルゴ
チンピラ同士の小競り合いの話かと思いきや、本話のラストはしっかりゴルゴが持っていく。正当防衛と称してサンチェスを撃ち殺すジョーの姿を見ていたゴルゴは、目撃者を消そうと襲ってくるジョーの仲間達を返り討ちにし、「おまえのいっていた正当防衛だ」と意趣返しをしてみせるのだ。
「俺が間違ってたよ!」と許しを請うジョーに、「いや……おまえは、間違ってはいなかった……“証人”は消せ……殺人者の“鉄則”だ……」と言い放つゴルゴが最高にクール。黙って撃ち殺してもよかったものを、わざわざ冥土の土産に教えてやる優しさ?が面白い。
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東郷 嘉博
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