この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第44巻収録。モンゴルのソ連傀儡政権打倒のため、民族革命評議会はモンゴル革命の英雄で“モンゴルの鷹”と呼ばれるセラットを組織の象徴として祭り上げる。一方、セラットの孫・ツベルマはソ連の陸軍保安部に逮捕されそうなところをゴルゴに救われる。ツベルマの兄・ジャンビンは妹の恩人をみて暗殺者だと見抜くが……。
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両大国に挟まれたモンゴル国
モンゴルの歴史と聞いてチンギス・ハーン(ジンギス・カン)を思い出す人が多いだろう。それ以降、特に近現代史を知っている人はどのくらいいるだろうか。
1979年に発表した本作では“モンゴル社会主義人民共和国”となっている(正式にはモンゴル人民共和国)ものの、東側の大国ソ連の崩壊に引っ張られる形で1990年前後に東側諸国が変わっていく中で、この国も社会主義から脱して1992年にモンゴル国となっている。
さかのぼって1924年に中華民国から独立した戦争における老いた英雄が、今回のゴルゴのターゲットとなる。
「モンゴルの鷹」にモデルはいるか
タイトル『モンゴルの鷹』は、1924年のモンゴル独立戦争時に伝説的英雄となったユミアジン・セラットの二つ名。この英雄のモデルを探したものの、ピッタリとした人物は見当たらなかった。
もし1924年に30歳とすれば、本作発表の1979年には85歳。馬を駆って蜃気楼を追い、ゴルゴとサシで対決しようとした心意気は素晴らしい。しかしながらゴルゴの敵ではなく、あっけなく眉間を撃たれている。
モンゴルが社会主義から抜け出すには、前述の通り1990年頃まで待つことになる。ゴルゴの1発が10年以上の歳月を費やさせたことになる。
行きずりでもモテモテのゴルゴ
鉄道でモンゴルに入国したゴルゴ。軍人に追われたモンゴル人女子大生が助けを求めて客室に飛び込んでくる。傍観していたゴルゴだが、軍人に敵意を向けられたことであっさり打ちのめした後、窓から放り投げている。
「モンゴルでは男たちはふるえている娘を肌であたためてくれるわ」と言って彼女はゴルゴの胸に飛び込んでいる。いつもながらゴルゴのモテっぷりは見事。
『ミッドナイト・エンジェル』『女カメラマン・キム』など似た展開はたくさんある。しかし最後に彼女の祖父であるモンゴルの鷹はゴルゴに殺される。「みんな蜃気楼よ」のつぶやきは哀れだ。
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研 修治
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