この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第44巻収録。MI6部長の座を退いたヒューム卿。彼は“ロザリン事件”と呼ばれる二重スパイ事件が心残りとなっていた。二重スパイは自殺したとされていたが、実際は口封じのために殺害されていたのだった。口封じを行った二重スパイが、いまだにMI6内に存在することを知ったヒューム卿は、ゴルゴに“公開処刑”を依頼する。脚本:北鏡太
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老いてもなお使命に生きるヒューム元部長
ゴルゴの依頼人としてお馴染みだったMI6のヒューム部長の退職後の姿が描かれる本話は、短いページ数の中で良質のミステリーを堪能できる名短編となっている。隠居の身でありながら二重スパイの炙り出しに心血を燃やし、ゴルゴと連携してスパイを追い詰めるヒューム卿の姿は、老いてもなお頼もしい。
それにしても、当初はヒューム卿を「老いぼれヤギ」と呼んで疎んじていたギャラガーまでもが、ラストでは他の同僚と同じくヒューム卿の作戦に唖然とした顔になっているのは面白い。やはりMI6部長の座に長くいたのは伊達ではなかったのだ。
ゴルゴとヒューム卿の言葉に出さない信頼
MI6の部長として、ゴルゴへの依頼回数No.1を誇ったヒューム卿。前回の登場である『女王陛下の憂鬱』ではゴルゴと若干微妙な空気になりかけるも、その後も彼らの関係は壊れなかったようで、今回の卿はゴルゴの手腕に文字通り命を委ねる決断をしている。
全てが終わった後の、「私は……世界で一番信用できる男に私の身をゆだねていたのだ……」という卿の言葉は感慨深い。なお、彼の出番は次の『ヒューム卿最後の事件』が最後となる。ゴルゴと言葉に出さない信頼で結ばれた彼こそ、初期ゴルゴを彩った名脇役であったことは間違いないだろう。
「薔薇の下」の会話を旨とする者達
作中でも解説があるように、本話のタイトルになっている「薔薇の下で(サブ・ローザ)」とは、秘密裏の会話を象徴する古代ローマ以来の言葉。ラテン語では「スブ・ロサ」と発音する。
ちなみに、これに関連してフランス語では「découvrir le pot-aux-roses(薔薇の鍋を見つける)」という慣用句で「秘密を嗅ぎつける」ことを表すのだそうだ。言わずもがな、ゴルゴと依頼人のやりとりは全て「薔薇の下」で行われるもの。作中で誰より多くそれを経験してきたヒューム卿の晩年を飾るには、実に相応しいタイトルだったといえる。
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東郷 嘉博
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