この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第192巻収録。軍隊を持たない国・アイスランドで、中国人実業家の陸が大規模な土地買収をはじめた。建前はテーマパークの建設だが、その目的は貿易拠点と武力拠点を作り、事実上の植民地化を図るものだった。そんなある日、13人のサンタが載った広告が新聞に掲載され……。脚本:氷室勲
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基地を壊滅させたあの地へふたたび
舞台は、タブーを犯し、ゴルゴを題材にした小説の発表を企んだ『ミステリーの女王』マッジ・ペンローズを基地もろとも葬り去った、ゴルゴにとって因縁深いアイスランドの地である。アイスランドには姓がなくファーストネームだけの呼称であることなど、あまり知られていない習慣の解説も面白い。
リーマンショック後、金融立国としての存立が危ぶまれるのを幸い、魔手をのばす中国共産党員、陸と包。テーマパーク開設という飴により国土を食い尽くそうとする野望に対し「やんちゃが過ぎた中国人が棺桶に入って帰国する」の予言は当たるのか。
領土拡張の魔手は日本にも伸びている
野望実現のためには手段を選ばないとはいえ、反対する地主の羊を焼き、発電施設を壊す陸の、想像を絶する悪辣さには言葉もない。ギリシャで利権に絡んだ山火事が起きたことがあったが、その原因は灯油を浸した布をウサギに巻き付け、火をつけて山に放ったことだという。
人間は、生き物の中で最も始末に負えない残酷な存在である。中国の領土拡張政策は対岸の火事ではない。日本でも白馬のリゾート開発をはじめ、世代が変わり、所有者が維持しきれなくなった水源地近辺の山の購入など、ダミー会社を使っての開発が進んでいる地域もある。
安全保障の最強の切り札
サイズの小さな救命胴衣は罠であり、陸のさおにかかった大きな獲物も、もしかしたら水中に隠れた潜水士の仕掛けかもしれない。細工は流々仕上げはお任せ、そして軍隊を持たぬ国はたった1人の男によって国土を守られた。
日本も安全保障のためには、燃料がなければ動かない戦闘機や戦艦の購入、敵基地攻撃能力の保持を検討するより、ゴルゴがピンチになったら必ず救いの手をのべる、という方針を決めた方が良いような気がする。『エアポート・アイランド』に登場する川口刑事なら、大喜びで何年でも自宅にゴルゴを泊めてくれるのではないか。
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野原 圭
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