この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第203巻収録。たまたまゴルゴと居合わせたために、災難に見舞われる人々の数時間を描いた短編。組織を裏切り大金を手に入れた男・パイパーは、あるバーでゴルゴを見かけ、組織が送り込んだヒットマンと勘違いしてしまう……。脚本:ながいみちのり
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ああ勘違い、のコメディーバージョン
BAR、それは完全な大人の世界である。しかも「見知らぬ」と枕がつけば、翳りのあるブロンドの美女とゴルゴとの出会い、彼女の背負った運命、そして2人の行く末は……という物語を妄想したが、残念ながら登場するのは人相の卑しい悪党ばかりである。
台風で足止めされた人々で混雑するBARでゴルゴを見かけた男達が『ホリデー・イン・ザ・パーク』同様、勝手に勘違いしてゴルゴを襲い、ことごとく返り討ちに遭うという、悲喜劇だ。複雑な政治・経済的背景や難解なメカニックの話はなく、単純に楽しめるエンタテイメントである。
BARでも煙草は御法度の時代
BARといえば煙草がつきものだが、ゴルゴは煙草を吸いに戸外へでている。最近先進国を中心に受動喫煙の害が懸念されていることや火災の危険から、屋内での喫煙が法律上禁止となっている国も数多くみかけられる。そんな環境の変化を場面設定にうまく生かしている。
勘違いして、いきなり難癖をつけながら襲ってきた男を、くわえ煙草で叩きのめす姿が最高にカッコいい。続いて現れた勘違い男は「ゴルゴ13に最初に撃たれた場所は眉間ではなかったと自慢できる」と、何だかアイドルに出会って握手した若者のように喜んでいるのがおかしい。
これが本当のバラマキだ
「欲に目がくらむ」とはよく言ったものだ。ゴルゴがただ者ではないのは確かだが、アタッシュケースに入った札束には何の関係も関心もないにもかかわらず、その金を狙う人間にとっては、そうは思えないのだろう。
とんだドタバタ劇の終幕は、よせばいいのにケースをこじあけて札束を拝んでいるとき、ゴルゴが開けたドアから吹き込んだ強風で札が乱舞する。大混乱のBARを背に、去りゆくゴルゴは心の中で「余計な手間をかけさせやがって。おちおち煙草もゆっくり吸ってられない。まったく、迷惑な奴らだ。」とつぶやいているにちがいない。
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野原 圭
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