この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第56巻収録。コロラド州の田舎町。町に帰って来た安ホテルの息子ボブが悪行の限りをつくすが、町民は見て見ぬふりをするだけ。新聞記者のオールグッドは、ボブを告発する記事を書くため調査を続けるが、ボブの出生にはこの町を牛耳る政治家・バークリーが関わっていた……。
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依頼者や依頼内容を推理して読む面白さも
基本的には話の序盤で依頼内容が語られることが多い『ゴルゴ13』だが、中には、依頼人や標的が読者に明かされないまま話が進むパターンもある。本話もその一つであり、読者はゴルゴが町にやって来た目的を想像・推理しながら読むことになる。
町民に尊敬される政治家のバークリー、ホテルの老夫妻、放蕩息子のボブ、町の裏事情を追う記者のオールグッド……。果たして誰がゴルゴの標的で、誰が依頼者なのか。ちなみに私は不都合な存在であるボブをバークリーが消そうとする話だと予想したが、見事に外れた。皆さんの予想はどうだろうか。
短いページ数に詰め込まれた人間ドラマ
その場限りの登場人物にも毎話しっかりドラマが作り込まれているのが『ゴルゴ』の魅力の一つ。小さな町を舞台にした短編である本話でも、各々の嘆きに染まった各人物の存在感が良い味を出している。
中でも物語を彩るスパイスとなっているのが、余所者の新聞記者・オールグッドの存在だ。文字通りデスク(机と上司の両方)を足蹴にし、お約束通り町のタブーであるバークリーとボブの関係にも踏み込んでいこうとする。記号的キャラと言ってしまえばそれまでだが本話の結末の後、彼がどんな記事を世に出すことになったのか実に興味深い。
珍しく依頼人と二度会っているゴルゴ
基本的に依頼人と再び顔を合わせることはしないのがゴルゴのルール。しかし、本話のラストでは、ゴルゴに逃亡用の車を渡してお礼を述べるという形で、依頼人が再び彼の前に姿を見せている。
その場所で車を受け取ることは恐らく事前に織り込み済みで、依頼人が勝手に現れたわけではなさそうだ。ビジネスライクな姿勢を重んじるゴルゴにしては珍しいルール破り。
彼がどのような理由からこの依頼人を特別扱いしたのかはわからないが、長年にわたる恨みを晴らしたいという依頼人の心情に、寡黙な殺し屋も少しは思うところがあったのだろうか。
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東郷 嘉博
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