この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第74巻収録。アメリカが進めるステルス戦闘機F-19の計画を阻止したいKGBは、F-19の奪取&設計者の殺害をゴルゴに依頼した。任務を終えたゴルゴは奪取したF-19に乗って逃亡する計画だったが、機体を爆破せざるを得なくなったため逃亡手段を失ってしまう……。
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車・飛行機は昭和ゴルゴの醍醐味
16巻『ペガサス計画』、22巻『スエズの東』の流れを継承した潜入アクションものである。本作のあとには73巻『ダイブtoトリポリ』なども発表されており、70年代後半~80年代後半作品はアクション巨編の宝庫だ。そのクオリティは上質のアクション映画を観ているのとなんら違いはない。いわゆる昭和ゴルゴの特徴は車や飛行機などのメカが美しく描かれているところ。
そのなかでもスーパーカーであれば35巻『ピリオドの向こう』、戦闘機であれば本作『見えない翼』が1番だろう。作中で描かれる戦闘機たちはミリタリーマニアを唸らせるほどの美しさで、繰り広げられる空中戦は本作最大のみどころといえる。終盤の戦闘機vs複葉機の戦いは痛快な読後感を残してくれるはずだ。
大戦の英雄ウィリー・B・ダニング
本作を彩る重要キャラとして登場するのが老操縦士・ウィリーだ。ステルス戦闘機の設計者を殺害したものの、逃走用の戦闘機まで失ってしまったゴルゴは基地近隣に住むウィリーに助けを請う。第一次世界大戦で旧型複葉機を駆り活躍したウィリーは、自分の愛機に関心を示すゴルゴをみて意気に感じた様子。
「危険なフライトになる」と謝礼を差し出すゴルゴに「金などいらん」と突っ返す心意気はさすが歴戦の兵だ。圧巻は米軍パイロットから“骨董品”と揶揄されるウィリーの複葉機が、速度と旋回半径の差を逆手にとって最新鋭の戦闘機をキリキリ舞いさせる場面。弱者が強者を倒す、これぞさいとう劇画に通底する美学だろう。
「ち、ちくしょうっ」の名言。KGBのクリスチナ登場
KGBの女性工作員・クリスチナの登場もみどころの一つだ。ゴルゴと情事で、「ちくしょうっ!悪魔!人殺しっ」と乱舞した一幕は語り草。序盤、身分を隠し娼婦としてゴルゴに近づいたクリスチナは、早々に正体を見破られてしまう。にもかかわらずゴルゴの詰問を無視し、ズボンを脱がせにかかるところはなかなかの強心臓だ。
それどころか交渉が終わるまでゴルゴの質問には一切答えず、二回戦まで要望するとはこれいかに。いやあ、ゴルゴが悪魔ならクリスチナも相当の小悪魔である。このクリスチナは作中で殉職。このシーンでは彼女の死に対するゴルゴの動揺が描かれている。これは15巻『アクシデンタル』で亡くなったデブラ同様、特定の女性に対し特別な感情をもっていたことを示唆している。
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町田 きのこ
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