この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第14巻収録。破産した名家・ホイットニー家に呼び出しをうけたゴルゴ。ホイットニー夫人はスペイン外人部隊に入隊した息子・ピーターが、部隊長のウイルキンスから陰湿な殺され方をされた事実を告げ、その敵討ちをゴルゴに依頼する。ゴルゴが現金以外の報酬で仕事を請け負った珍しいエピソード。脚本:岩沢克
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現金前払いならぬダイヤ前払い
ゴルゴが依頼を受ける際の厳格なルールは有名だ。しかしいくつかの作品では仕方なしにゴルゴが折れているものがあるのも事実である。『リオの葬送』ではゴルゴの前に依頼主が姿を現さなかったし、『裏切りのスワスチカ』では正体を隠して依頼していたのだ。
本作の依頼人である老婦人は“依頼主は現金前払いをする”という約束事を知らず、ダイヤで支払おうとする。一度は断ったものの、最終的にはゴルゴが妥協するストーリー展開だ。しかしゴルゴが捕らえられた際、このダイヤを隠し持っていたお陰で独房から脱出するチャンスが訪れている。小道具に見せ場がある一風変わった作品といえるだろう。
依頼主の見せる気概
登場人物で注目したいのは、ダイヤ前払いでゴルゴに依頼したホイットニー婦人だ。彼女はゴルゴへの依頼後、館から身を投げ自殺してしまう。『みな殺しの森』『ザ・スーパースター』などであった死を目前とした人間の依頼を引き受けるゴルゴ、という構図を読み終わってから気付く秀逸な作品となっている。
しかも注意深く読み返すと婦人はダイヤを「ホイットニー家最後の力」「この世に未練を…残させないで!」など、終わりを匂わせる台詞を何度も伝えていることが分かる。これをゴルゴが察し、死を目前とした人間の依頼を引き受けるに至らせたのだろう。
ゴルゴを主軸に描かれる王道の物語
本作の物語はゴルゴの素手アリ銃器ありのアクションシーンを筆頭に、彼のルールにまつわるエピソードが複数、更に窮地からの脱出劇とゴルゴが主役の物語が好きな人にはたまらない構成になっている。特にゴルゴのルールについては“現金前払い”と“依頼主は包み隠さず事情を話さねばならない”を対照的に描き、彼のルールに対する並々ならぬ想いを表現している。
そしてルールに従わず力で従わせようとした際の末路も、だ。ちなみにこのシーンでは札束を撒き散らして目くらましにし敵の銃撃を回避する躍動感あふれるゴルゴが描かれている点もみどころである。この作品さえ読めばゴルゴの人となりが分かる王道的作品と言えるだろう。
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小摩木 佑輔
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