この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第91巻収録。PALコンピューター社のアイゼンバーグは、台湾から自社製品の模造品が大量流通していることを知り、模造品を製造しているメーカーと半導体の密輸ルートの調査を開始する。しかし模造品売買に関わる闇組織がKGBに半導体を横流ししている情報に触れてしまい……。脚本:犬丸らん
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ソビエトの人たちは日本食に目覚めたのか
かつてロシアがソビエト連邦という社会主義国だった頃、来日したロシア人が秋葉原の電気街で炊飯器を爆買いしていたことがあったらしい。ソ連でおにぎりなど日本食がブームとなったのかといえば、そうではない。お目当ては炊飯器に組み込まれた半導体を含むICチップ。
共産圏に対し正規の輸出には厳しい規制があったが、お土産の炊飯器なら網の目をくぐることができたのだ。今やトイレや給湯器など生活に欠かせない半導体、今回はその半導体の輸出を巡って、台湾の黒社会とアメリカ企業が繰り広げる熾烈な攻防に、ゴルゴが終止符を打つ。

理解が難しい知的財産という見えない権利
台湾の調査会社の陳が、PALコンピュータのフランクに「この国には知的財産という考えそのものが存在しない」と語るが、この問題は台湾だけに限らない。
日本でも商業映画館で、堂々と映画を録画している人を咎めたところ「環境問題に関する素晴らしい映画だから、後で他の人たちに見せてあげるつもりだった。何が悪いの?」と悪びれる様子がなかったという。
その人は自治体の広報担当をしているということだ。目に見える物を盗んではいけないのは理解できるが、見えないものの権利保護は、理解そのものが難しいというのが実状なのである。
竹聯幇の頭目は大家祖の方が貫禄あり
『黒い星』に登場する竹聯幇の大家祖(おおあねご)張金栄に比べると、劉宗ぶんは、好色金満オジサンにしかみえない。今回ゴルゴは本職の狙撃ではなく、いわば裏技でミッションを遂行するのだが、最後の最後で手下に去り際のチップをお見舞いする。こんなオヤジの下で働いていた不運な手下が気の毒である。
やはり子分として親分は選ばないと、という訳で大家祖・張金栄が誕生したのかもしれない。彼女はゴルゴに「あなたの素晴らしいお仕事はこの竹聯幇でも賞賛の的です」と語っているがこれもゴルゴの仕事と知ったならどんな顔をするだろう。

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野原 圭

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