この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第36巻収録。ボリビア全鉱山の国有化を目論む陸軍総司令官・サントスは、非常に用心深いことで知られ、普段は屋敷から一歩も出ない。ゴルゴは突破口を求めて情報を収集。スパイに密告現場を録音したテープを聞かせたり、一般人に家族の写真を見せ「殺すぞ」と脅したりと、ダーティなゴルゴが楽しめる一編。脚本:外浦吾郎
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実は頻繁にどしゃぶりになるチチカカ湖
ゴルゴファンの間でも面白タイトルとしてよく話題に上る、この「チチカカ湖はどしゃぶり」。杉森昌武氏の文庫版解説によると、チチカカ湖は11月から3月にかけて雨季に入り、しょっちゅう「どしゃぶり」なのだという。
それがラジオでの暗号文として機能するということは、普段はわざわざ天気予報では扱われない地域なのだろうか。なお、湖畔の別荘というと山奥の静かな湖を想像しがちだが、チチカカ湖は実に琵琶湖の12倍の面積を誇る、南米大陸最大の湖。チリに領土を奪われ内陸国となったボリビアが、海軍基地を置いていることでも有名だ。
プロから一般人まで多くの協力者を動員
難敵の攻略のために工夫を惜しまないゴルゴ。今回もアナウンサーを脅迫して「チチカカ湖はどしゃぶり」の暗号を聞き出したり、軍人を装ってアマチュア無線家に協力を要請したりと、いつにもまして多くの作戦が披露される。
中でもサントスが脱出用に準備している戦闘機のパイロットを籠絡するべく、高級娼婦をはるばるアメリカから呼び寄せるのは驚きだ。調べたところ、ロサンゼルスからボリビアのラパスまで、飛行機での所要時間は7時間程度。1977年当時はもっと掛かったかもしれない。彼女もなかなかのプロフェッショナルである。
ゴルゴほど臆病にはなれなかったサントス
ゴルゴは、プロの世界で自身が生き残ってきた理由についてしばしば「臆病さ」を挙げている。臆病なまでの慎重さこそが極限の状況での生死を分けるということだが、今回の標的であるサントスも、それに通じる用心深さを備えた人物のように見える。
しかしサントスは作中で「臆病と、用心深さとは似ているようで少し違う」「臆病者はしょせんいざとなれば……あわてふためくだけだ」と述べている。結局、ゴルゴほど「臆病さ」に振り切ることはできなかったようだ。ゴルゴが彼の立場なら、戦闘機のコクピットを事前に調べさせるくらいしただろう……。
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東郷 嘉博
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