この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第50巻収録。現地に住み着き活動を続ける“スリーパー”と呼ばれるCIAの潜入諜報員・レオン。レオンの正体を突き止めたKGBは、ポーランド秘密警察と結びついたレオンを、造船所のストライキ対策委員長に推すことで利用しようとする。レオンの素性が明らかになっては困るCIAは、口封じのためゴルゴにレオン暗殺を依頼する。脚本:北鏡太
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想像を超えた「スリーパー」の苦悩の日々
「スリーパー・エージェント」とは、長期にわたって敵地に潜入し、現地の人間になりきって生活しながら諜報活動を行うスパイのこと。今回のゴルゴの標的となるレオンがまさにそれで、彼は祖国ポーランドからアメリカに寝返ってCIAの工作員となり、その身分を隠して祖国で偽装生活をしているのだ。
ところが、その偽装のために結婚した妻が子供を身ごもり、彼は葛藤に揺れている。味方の連絡員にもそれを見抜かれて釘を差されているほどだ。配偶者にまで正体を隠して二重生活を続けることの重圧はいかほどか、想像も及ばない世界である……。
「道具」に徹するゴルゴの静かな存在感
ゴルゴがあまり出てこないエピソードは珍しくないが、本話もその典型例であり、ゴルゴはレオンの狙撃シーンでしか姿を見せない。作中、CIAの局員がゴルゴを「道具」と称する場面があるが、今回のようなエピソードでは、ゴルゴはまさに話を進めるための「道具」に徹している。
ターゲットはゴルゴの存在すら知らないまま死んでいくわけで、それがまた味わい深いのだ。ゴルゴが出てこなくても面白い……というと語弊があるかもしれないが、エピソードごとに全く違った趣向の作風が楽しめるのが『ゴルゴ13』の魅力だと改めて強調したい。
儚い命だからこそ輝くスパイ達の存在
冷戦時代に始まった作品だけあり、スパイを扱ったエピソードには事欠かない『ゴルゴ13』。今回のような話を読むたびに私が抱くのは、スパイとは哀れな職業だな……という感想だ。敵にバレれば始末され、裏切って逃げても始末され、あげく今回のレオンのように、敵にバレそうになっているだけでも味方によって始末される。
彼らの命は使い捨てで、スパイ映画のように八面六臂の活躍を見せるスパイなど現実にはそうそう居ない(ゴルゴだって居ないというのは言わないお約束)。そんな儚い命だからこそ、彼らは毎回忘れえぬ輝きを放つのだろう。
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東郷 嘉博
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