この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。2010年、内戦が勃発したリビアを舞台に、ゴルゴと一人の日本人医師との奇妙な友情を描く。共に“アラブの春”をリビアで経験した医師の華生と元公安の池谷。いつもの居酒屋で旧交を温める二人は、当時、現地で発生したある事件を回想する…。脚本:ながいみちのり
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アラブの春
2010年から中東アジアや北アフリカで起こった民主化を求める運動「アラブの春」。当初こそ勢いはあったものの、結果的にほとんどが失敗に終わっただけでなく、更なる混乱に陥ってしまった国々も多い。
本作の語り部である華生は当時のリビア・トリポリにある日本大使館で医務官を務めており、彼が過去を振り返る形でゴルゴの言動が描かれている。なお、アラブの春をきっかけとして起こったリビア内乱により、リビアの指導者であるカダフィ大佐が反政府勢力に殺されてしまう。そしてシリーズ『顔のない男』につながっていく。

ゴルゴとの二人行脚
華生の単独行動を危険視して、同行を申し出るゴルゴ。「人を隠すなら人混みの中」のように、他のツアー客とバスで移動した方が良さそうに思うのだが、ゴルゴは身軽さを重視したのだろうか。その後のゴルゴは、華生の前で医学知識や流暢なアラビア語に加え、民兵相手に怪しげな交渉術(腕力ずく?)を垣間見せる。
ためらいつつゴルゴの身元を「ハンターかな」と推理した華生。その辺りで考えを留めておいたのは賢明だ。それ以上ゴルゴの正体に迫ってしまえば、華生は殺されても不思議ではなかった。それを含めてゴルゴは同行を申し出たのかもしれない。
時計の価値
子供を治療した華生は、現地の医師にお礼と友情の証しとして懐中時計を進呈した。その華生に時計を貸して欲しいと言われたゴルゴは、自分の腕時計を「返す必要はない」「ここまでの“交通費”だ」と渡している。
シリーズ初期にはローレックス、『BEST BANK Ⅱ オフサイド・トラップ』ではチューダーの腕時計をしていたゴルゴ。『螺旋』でも時計にこだわる姿勢を見せている。華生に渡した時計の文字盤には「AR」とある。おそらく「AP」、つまりオーデマ・ピゲのオマージュだろう。ウン百万円の交通費は口止め料を兼ねているのかもしれない。
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2025年1月現在、単行本化はされていません。単行本化までしばらくお待ちください。

研 修治

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