この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第69巻収録。心臓死をもって死亡と認定されるスウェーデン。マフィアのボス、ベイルマンは心臓発作による心停止で死亡と認定されが、人工心臓で奇跡の蘇りを果たす。法律上は一度死亡した人間として定義されるため、法を犯しても死人を罰する法律がないと知ったベイルマンは……。脚本:安達謙太郎
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法律で決まる死の定義
心臓が止まれば死。では心臓が止まって死亡宣告後に動き出したらどうなるか。本作発表の1986年当時は死にの定義について混乱した頃だ。そんな時期に心臓死を死と認めていたスウェーデンを舞台とすることで、法を悪用して捕まらないマフィアのボスがターゲットになる。
ゴルゴシリースではどこか善の部分を持つ人間がターゲットになることが多いだけに、100%、いや1000%悪人がターゲットになるとゴルゴが正義の味方になるようでスッとする。ただ死者を罰する法律がないのはともかく、死者が財産を保有したり権利を主張したりできるのだろうか。
なぜか重視される加害者の権利
本作で白々しさを覚えるシーンがある。マフィアのボスに人工心臓の手術を施した医者やスウェーデン医学協会のお偉いさんは誇らしげにメディアの前に登場する。そのうえでお偉いさんは、「人間の生命の尊厳を守ることを第一義として、断じてこの手術を支持する」などと言って拍手を浴びている。
では、そのマフィアのボスに殺された人間達の尊厳はどうなるのだろうか。加害者の権利ばかりを重視して被害者が見捨てられがちな状況が生まれるのは、日本でも度々批判されるが、舞台となったスウェーデンも似たような社会なのかもしれない。
証拠を残さない狙撃方法
依頼人となるSAPO(スェーデン国家保安警察)の高官は、「狙撃の証拠を残さないでほしい」とゴルゴに頼んでいる。そんな条件をつけたにもかかわらず悠然と引き受けたゴルゴに高官は感銘を受けるものの、さほど困難な条件ではない。例えば『氷上の砦』『アジ・ダハーカの羽』などでは特殊な弾丸を使って狙撃の痕跡を消している。
本作と似た殺害方法では1992年発表の『メディアコントロール』がある。ここでは心臓に病気を抱えたターゲットを心理的に追いこんで心臓麻痺を起させている。本作で入手したデータをちゃっかり活用したのかもしれない。
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研 修治
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