この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第171巻収録。旧ソ連の退役軍人で構成されたテロ組織「赤い五月」が、軍人を見殺しにする政策をとる政権に天誅を下すべく立ち上がった。リーダーの女帝レーナは、細菌兵器を使っての大規模テロを画策。細菌学の権威ジキンスキー博士を拉致し、細菌の増殖を指示する……。脚本:横溝邦彦
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レーナは優秀な革命戦士
多くの部下を統率し、よく練られた戦略でロシア政府を追いつめたレーナは、カリスマ性も実行力も備えた文句なしに優秀な革命戦士だ。威嚇のためロシア軍隊長のボルコフ大佐の足の甲を躊躇なく撃ち抜くあたり、状況判断(ボルコフ大佐を無力化し、他のロシア軍メンバーへマウンティング)も的確。
ただしレーナには狂気を感じる。いや狂気しか感じない。これが革命を志す者が取りつかれる魔力というものか。『6月3日の死』でチベット独立過激派のサムテン・シャカパも同様の狂気を持つ男だ。『機関全開』にも革命を志すエクアドル5人衆が登場するが、レーナやシャカパに比べると狂気が不足していて、レーナを見習ったらどうかと言いたくなる。

炭疽菌によるテロを思い出させる
エピソード中にもあるが、2001年の同時多発テロ事件の直後に手紙で炭疽菌を送り付けるというテロが発生した。若い読者はご存じないかもしれないが、アメリカで大騒ぎになって日本でも随分と取り上げられたものだ。
しかし世間というものは熱しやすく冷めやすい。ほとんどの人が炭疽菌の恐怖など忘れてしまっているだろう。そこへ警鐘を鳴らしてくれるのが今エピソードである。本作を通してバイオテロ兵器への転換封じ込め、実験地域の無毒化など解決すべき課題が見えてくる。ちなみに炭疽菌は『AZ4 CP72』でも出血熱と混合されバイオテロの主役として扱われている。
天使の翼=エアーサルベージ機
レーナがカニン島から脱出するために用意していた手段がエアーサルベージだ。寡聞にしてエアーサルベージなるものがこの世に存在することを知らなかったのだが、画を見れば一目瞭然。確かにエアー(空の)サルベージ(引き上げ)だ。
誰が考えたのか、ちょっと常人には思いつかないような発想のツールである。エアーサルベージの成り立ちや歴史について調べるべく、検索してみたところ、WEB上で得られる情報はほとんどなかった。軍事目的か災害時避難目的で開発されたツールと思われるのであるが、興味のある向きはご自身で調べられたし。

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片山 恵右

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