この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第101巻収録。情報操作の腕を見込まれ、アメリカ国防総省に雇われた映像プロデューサー、サエジマ。彼はユーゴスラビアでの米軍によるクロアチア軍事介入を容易にするため、意図的に世論を操作する映像を作成する。サエジマの師・フジワラは、嘘の映像は大衆を愚弄することになるとし、サエジマに警告を発するが……。脚本:熊坂俊太郎
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マスメディアに力があった時代
意図的に角度をつけたやらせ記事や、過剰な演出で視聴者を操ろうとする番組が問題となることがある。『偽りの報道番組』では引退を装った番組を作って身を隠そうとする麻薬王をゴルゴが殺害している。
もっともネットが個人に広まった現代では、SNSの方が信頼性が高くなっていそうだ。香港で起きた混乱は中国メディアでは主旨を変えて報道しているものの、香港住人のリアルな言動はSNSを通じて中国国内に広まっているとの話もある。本作が発表されたのは1992年。まだまだマスメディアが力を持っていた時代だ。

ゴルゴがどこまで狙っていたか
ターゲットとなった日本人プロデュサーのサエジマは、「友人にはしたくないタイプだ……」と政府高官に言われてしまうような人間。もっとも性格だけでゴルゴに狙われるわけではなく、彼の行きすぎた欲望が原因だが。
ただゴルゴの殺害に至る行動が引っかかる。アジトに立てこもるサエジマに対して、ゴルゴは監視カメラを全て壊すことで視覚を封じて心臓の悪いサエジマに心臓破裂を起こさせている。死亡原因を知った政府高官は、「ゴルゴはサエジマの持病すらも調べ上げていた、とっ……!?」と絶句するのだが、そんな不確定な方法をゴルゴがとるだろうか。
ゴルゴとSNSの相性は?
最後で「世界のメディア戦略は、一過性の画像が時の重みすら変えてしまう段階に確実に突入している」と締めくくっている。本作の発表から四半世紀以上が過ぎた現代では、もはやマスメディアよりもSNSのような個が発信するメディアに重点が移っている面がありそうだ。
『アームストロングの遺言』では動画投稿サイトにアップされた偽の動画からアメリカを混乱に陥れようとする陰謀が起きる。ただし犯人は相場で儲けようとした投資家達だった。いつか一般人のフェイスブックやツイッターから発生した事件がゴルゴへの依頼となる日は来るのだろうか。

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研 修治

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