この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第84巻収録。CIAの追及を逃れたいコロンビアの麻薬王・サントスは、悪徳TVプロデューサーのジム・パターソンと結託し、サントスが死んだと思わせる偽のドキュメンタリー番組の制作を考える。番組内でサントスは、組織からの引退を告げ拳銃自殺をとげる芝居を打つが……。
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漫画の中だけの話ではない麻薬汚染
文庫版の解説でも述べられているように、本話発表の1989年には、米軍がペルーに侵攻し、同国のノリエガ将軍を麻薬密輸の容疑で逮捕している。舞台は違えど、本話の標的の麻薬王サントスの存在は、その事件を下敷きにしたものだろう。
作中では「コロンビアの経済復興に麻薬産業が重要な役割を果たしてきた」とも述べられている。ところで、2020年10月、メキシコの前国防大臣が麻薬組織の黒幕として米国検察に摘発されるという、まさに漫画のような話が現実に報道され話題になった。国家規模の麻薬汚染は決して過去の遺物ではないのだ。
ヤラセ番組の撮影を逆手に取った狙撃
本話では、悪徳テレビプロデューサーと麻薬王による壮大なヤラセ計画を逆手に取り、カメラの前での狂言自殺の瞬間に重ねて標的を狙撃するというゴルゴの活躍が描かれる。撮影に合わせた狙撃といえば、真っ先に連想されるのは、映画の決闘シーンに合わせて出演者を狙い撃った『ハワード・ヒューズ氏の息子』。
あちらでは、殺害の瞬間が収められたフィルムが実際に劇場公開されてしまうという驚きの結末になったが、今回はカメラを手にしたプロデューサーもゴルゴの手でしっかり始末されており、まず間違いなくフィルムも葬られたものと思われる。
一向に改善されないテレビ局のヤラセ体質
麻薬汚染を扱った話のように見えて、同時にテレビ局のヤラセというブラックな話題にも切り込んでいる本話。直近でも、2020年に発生した「テラスハウス」の事件は記憶に新しいが、本話発表の4年前の1985年には、テレビ朝日系「アフタヌーンショー」の「やらせリンチ事件」が世間を震撼させている。番組のディレクターが暴走族の番長に金を渡し、構成員へのリンチを教唆していたという悪質極まりない事件であり、ディレクターは逮捕、懲戒解雇となった。
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東郷 嘉博
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