この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第79巻収録。ブロードウェイの敏腕・ボブは、会長であるコーナンを殺し屋をつかって殺害し、その後の実権を握ろうと企む。ボブを一流に育てたコーナンは、恩を仇で返すボブのやり方に激怒。ボブが世界屈指の狙撃手を雇ったのに対抗して、コーナンはゴルゴに仕事を依頼するが……。
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ブロードウェイの赤裸々な内幕
ミュージカルスターを目指す誰もが憧れるブロードウェイ。華やかな世界の裏で渦巻く欺瞞と虚飾を舞台に、2人のスーパースナイパーが繰り広げる超絶技巧の狙撃技に魅せられる。
ブロードウェイの興業ターゲットが、国内外から訪れる「おのぼりさん」であることの説明に、少々驚くが、女優・米倉涼子がブロードウェイで、ミュージカル『シカゴ』の主役を演じた理由も、もしかしたらその辺りにあったのかもしれないと納得する。ウィーンフィル恒例の「ニューイヤーコンサート」も、ツアー客しかチケットが取れないのもそんな理由かもしれない。
セクハラの概念自体が存在しなかった時代
コーナンがオーディションに立ち会った後「ターゲットは暇と金のある頭の軽めな女・ビッチだ。お前たちはビッチの目で見ているか」という趣旨の発言をしているが、それを言うならスタッフに女性を入れれば良いだけの話であり、男社会の盲点に気づいていない。
さらに、スティグナーは商品である女優と性的関係を持つことを躊躇せず「俺と寝たがっている女はごまんといる」と思っている。最近ようやく映画界などでの性的虐待、例えば役と引き替えに性的関係を迫るという実態が問題視されてきたが、この時代は「何が悪い」という感じである。
狙撃手・ニコラヴィッチの悲しい運命
ゴルゴがその狙撃術に絶対の信頼を置くニコラヴィッチはKGBに利用されたのだが、その手口は元外務省職員の佐藤優氏による「やばい仕事は休暇中にやらせる」という、そのままの汚さである。それはソ連の選手にオリンピックで金メダルを取らせるための陰謀でもあった。
上官は「馬鹿な男だ」というが、KGBの要請を断ることなどできるはずもない。ニコラヴィッチの殺害まで依頼されたときのゴルゴの表情に、彼への痛ましい思いが伺える。しかしニコラヴィッチの運命を考えれば、自らの手で葬るのがせめてもの手向けと思ったのだろう。
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野原 圭
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