この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第54巻収録。ミシガン州を訪れたゴルゴ。しかし依頼人は交通事故で重傷を負ってしまい、ゴルゴには会えず仕舞い。したがってゴルゴはミッションを知らされぬままミシガン州を後にする。物語は小さな町でゴルゴと遭遇した人々の、驚きと混乱をひたすら描くといった異色のエピソードとなっている。脚本:須摩鉄矢
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小さな町で起こった予期せぬ出来事
本話の舞台となるのはミシガン州ワシュトナウ郡の小さな町。同郡の人口は1980年時点で26万人弱で、日本なら山形市や徳島市あたりと近い人口規模である。警官も宿屋も医者も全てが顔見知りという空気感は作中でも強調されており、「腰抜けスティーブ」のように一度はみ出し者になってしまった人間にはとことん生きづらそうな環境だ。
この町の人々は最後までゴルゴの正体を知らずに彼を見送ったようだが、その後、彼との僅かな邂逅が皆の語り草になったことは想像に難くない。ジルがスティーブとよりを戻す目が100%なくなったことも……。
珍しくちゃんと言葉で女性を振るゴルゴ
行く先々で多くの女性を骨抜きにしてきたゴルゴ。スティーブの元妻ジルもその例に漏れず、ゴルゴを大胆に誘惑してベッドを共にする。「小さい時から強い男と結婚するのが、夢だったわ……」とゴルゴの腕の中でうっとり語るジルと、無表情で葉巻をくゆらせているゴルゴの対比が可笑しい。
ゴルゴに完全に惚れきってしまったジルは、去り際の彼に「私を連れてって!」とせがむが、ゴルゴは「“男”……なら、他をあたってくれ……少なくとも“女と暮らしてもいい”と思っている男をな……」とピシャリ。無言で立ち去らないのがせめてもの優しさか。
依頼人の目的も敵の正体も不明のまま
今回のゴルゴは、ガス・バロネという男から依頼を受けるために小さな町に逗留していたが、その男が死んでしまったためアポは空振り。読者にもゴルゴ自身にも依頼内容は不明のままとなってしまった。
依頼人が死んで目的不明のまま終わる話といえば『KING OF BIRDS』などが思い出されるが、あちらでは少なくとも敵の正体ははっきりしていたのに対し、本話は本当に何もわからない。なぜ待ち合わせがこの町だったのか、バロネを追ってきた二人組は何者だったのか……。きっとゴルゴは何度もこうした空振りを味わっているのだろう。
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東郷 嘉博
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