この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第138巻収録。かつて腕利きのパイロットとして活躍した桂木に、旧友・堀田の息子が訪ねてくる。インドの無医村で医者をしている堀田に手を貸してほしいという。申し出をうけた桂木は、危険地帯のフライトに対処するため雇われたゴルゴを伴って、再び操縦桿をにぎる。だが敵兵の対空砲火により、ゴルゴは重傷を負ってしまう……。脚本:横溝邦彦
スポンサーリンク
良い意味で荒唐無稽なストーリー
これぞ航空冒険アクションというゴルゴの活躍が堪能できるエピソードだ。カシミール地方の政治情勢など、日本人になじみの薄いややこしい話も出てくるが、そんなのはお構いなしに“良い意味”で荒唐無稽なストーリーを楽しめばいい。
そういった楽しみ方ができる荒唐無稽なゴルゴのエピソードは枚挙にいとまがないが、ここでは女流ミステリ作家を始末するために駐アイスランド米軍基地を壊滅させる『ミステリーの女王』、ナチス残党の要塞”狼の巣”へ一人で乗り込む『崩壊 第四帝国 狼の巣』、戒厳体制下のリビアへ夜間落下傘降下で侵入する『ダイブtoトリポリ』を挙げておこう。

トリビア満載でストーリーに彩りを
多くのことを示唆してくれるエピソードである。まず高級ニットの代表である”カシミア”がカシミール地方のカシミア山羊の毛であること。さらに希少なチベットカモシカの毛はカシミアの10倍はするということ。カシミール地方がイギリスのワル知恵によって分裂騒動で苦しめられていること。天然食塩で作った生理的食塩水が輸血の代替となること。
そして戦後日本の航空史秘話。ゴルゴのアクションやスリリングなストーリーに加えてこれらのトリビアが彩りとなり、ゴルゴの魅力を高めている。ここにも我々がゴルゴを読む理由があるのだ。
題名の“黄昏”とは
悠々自適な隠居生活から、昔の借りを返すために若返らざるを得なかった桂木。初めは乗り気でなかったもののゴルゴに信頼を寄せられていることがわかり、70歳超であろうとは思えない活躍を見せる姿が好ましい。
しかし、友人の裏切りと忘れていた在りし日々への喪失感が、帰国後の桂木を一気に老け込ませたのは切ない。堀田親子は自業自得であるが、桂木は善意の第三者であっただけに気の毒だ。おまけに嫁から『どうするの?……介護なんて嫌よォ……』とぼやかれている。ラストで題名の“黄昏”の意味するものがわかり、より一層切なさを引き立たせる。

この作品が読める書籍はこちら

片山 恵右

最新記事 by 片山 恵右 (全て見る)
- ゴルゴ13:第211話『AZ4 CP72』のみどころ - 2021年11月14日
- ゴルゴ13:第410話『イリスク浮上せよ』のみどころ - 2021年6月11日
- ゴルゴ13:第283話『未来への遺産』のみどころ - 2021年5月20日