この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。個人タクシー業者のブランブルが寿命を全うした。悲しみに暮れる孫娘のロザリーンだったが、そんなときブランブルが隠し持っていた秘密の携帯電話の呼び出し音が鳴り…。ゴルゴが逃走用に構築し利用している個人タクシー網が明かされる興味深い一編。依頼の陰にはあの人物も…。脚本:夏緑
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想定外へのゴルゴの対応
万全の準備で仕事に挑むゴルゴだが、本作では3つの想定外の事態が発生している。『最後の戦場』にもあるように、万一に備えてゴルゴは脱出ルートを作っている。本作ではベテランタクシードライバーと契約していた様が描かれているが、高齢のドライバーが急死したのは、さすがのゴルゴも想定外だろう。
さらにドライバーの孫娘であるロザリーンが泣きはらした結果、声がしわがれていたのもゴルゴは想定外だったはず。負傷していなければ、聞き分けられたかもしれない。それでも、ロザリーンがなかなかの運転技術を持っていたのはゴルゴの強運ゆえか。
黒人奴隷が逃げのびるために
作中に登場する歌「北斗七星を追いかけろ(Follow the Drinking Gourd)」は、アメリカに奴隷制度が存在していた頃、黒人奴隷が逃げる方法を歌詞の中に折り込んでいる。歌詞に従い北斗七星、つまり北に向かって川を越えると、奴隷制度の無い自由な州に逃げられるとの内容だ。
ベイストン・ヒルのある方角はロンドンから北側と言えなくもない。運転初心者ながらレースゲームが得意なロザリーンに巧みな指示を出したゴルゴ。霧の深いセヴァーン川に追手の乗った車を転落させたのは、歌詞にヒントを得たのだろうか。
口は災いの元
最後に登場したのは、MI6職員のギャラガーと元部長のヒュームに仕えていたヒックス。ここで現在のMI6がゴルゴへの連絡方法を無くしていたと判明する。『イングリッシュローズ』で、MI6とゴルゴが疎遠になった様子が描かれているが、ここまで至ると平和ボケが心配になる。
ギャラガーに追及されたヒックスは、「バラの下に……隠しておくのが紳士」と語っている。これは古代ローマの習慣で、バラを天井につるした会合では、そこでの出来事や会話を秘密にすることから来ている。ゴルゴと付き合っていく以上、余計なことを話さないのが吉だろう。
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2023年5月現在、単行本未収録作品です。ビッグコミック本誌でしか読めません。
ビッグコミック『霧と薔薇の葬送』掲載号
研 修治
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