この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第8巻収録。ゴルゴは射撃場で好人物・オットーと知り合う。オットーとの会話から、二年前にゴルゴが完遂した狙撃に依頼者の嘘が混じっていたことが判明する。一方、嘘の依頼をした張本人・ゴードン知事は、ゴルゴが身辺に現れたことを知り、ゴルゴの殺害を企てるが……。脚本:K・元美津
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鋼鉄のゴルゴと焦るゴルゴ
本作では鋼鉄の精神力で魅せるゴルゴと、意表を突かれ焦るゴルゴの対比を楽しむことができる。まずは序盤、6ページにわたってチンピラに絡まれる。アメリカ南部に根強く残る人種差別を描いたシーンだ。一般人なら文句の一つも言いたくなるような行為だが、ゴルゴは唾を吐きかけられようが微動だにしない。鋼鉄の精神力だ。
一転して中盤。ゴルゴの仕事道具をクラリネットと勘違いされ、黒人奏者に「一緒にやろう」と誘われるシーン。意表を突かれたゴルゴは「い、いや…!」と焦って返答する。要するにこの誘いは彼にとって想定外だったのだ。思わずクスリとしてしまうシーンである。
喋りすぎなオットー・ビギンズ
面白い登場人物としてはオットー・ヒギンズが挙げられるだろう。『最後の間諜-虫-』ではスイス銀行の頭取が1ページ丸々喋りつくして、ゴルゴの機嫌を損ねている。が、オットーはそんなレベルではない。ページにしておよそ3ページ。一言も言葉を発しないゴルゴを相手に喋り倒すのである。あとから訪れた娘も「パパほどのおしゃべりも少ないけどね」と苦言を呈するほどである。
この親子が善良な白人代表として描かれているのに対し、差別主義者の悪役的白人の存在も見逃せない。黒人に対し一方的な暴力をふるい、店の破壊などやりたい放題。しかも彼らが罰せられることがない事実が現実的に描かれているのだ。
温故知新
物語の舞台は人種差別が根強く残る地域で展開される。黄色人種であるゴルゴや黒人が、一部の白人から様々な迫害をうけるのが印象的だ(大半の白人は善良な市民として描かれている)。本作最大のみどころは現在の情勢に通じる人種差別の背景を学べる点だろう。
本作品が掲載されたのは1971年6月とあるが、2020年現在、世間ではBLM問題が騒がれている。この作品で語られたような迫害の歴史が背景にあるのだと、50年前の作品から学べるのである。正に故きを温めて新しきを知る、本作はそんな言葉がぴったりの作品だ。
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小摩木 佑輔
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