この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。マフィアからの借金を滞納し、窮地に立たされたゴシップ記者・ルウ。彼は大物俳優・ロブソンに関するある秘密をネタに、ロブソンから大金をせしめようとする。CIAの友人からゴルゴを紹介されたロブソンは、ルウの始末を依頼するが、最終的にロブソンが下した決断はまさかの……。
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有名税は想像以上に高いもの
アニメソングの女王といわれる堀江美都子は、当初、アイドルとしてのデビューを希望していたが、しばらく声優の仕事がメインだった。その後アイドルとしてのオファーがきたが、熟慮の末断ったという。理由は「このままなら電車で口開けて寝られるし」ということだった。
有名になりたいという願望は多かれ少なかれ誰もが一度は持つだろう。しかし、顔が売れれば、バーゲンセールを冷やかしたり、気軽に電車に乗るわけにもいかず、案外不自由な生活を強いられる。まして本作のロブソンのようなスターにとって、スキャンダルは命取りである。
不治の病といわれたのは昔の話
この作品が発表された当時、エイズは不治の病として恐れられていた。永六輔氏が外国人に「永(エイ)ズ ファミリー」と自分の家族を紹介したら、相手は勘違いし、一瞬ドン引きしたという笑えない話もある。現在は呼称もHIV感染症が一般的で、治療薬も開発された。
もちろん予防を怠って良いわけではないが、以前のように徒に恐れる必要もなくなってきている。また冒頭で、女優とのスキャンダルをでっちあげられたとロブソンが怒っているが、かつて日本の映画界では、男女の主演同士の交際ネタは、新作映画の宣伝として常套手段だった。
重荷を下ろすことになった衝撃の結末
本作の主人公ロブソンは、実在のハリウッドスターがモデルと思われ、その人物は自身の同性愛とHIV感染を公表している。もしかしたら、ブラドックのようなゴシップ記者に真相をかぎつけられ、脅されたのがきっかけかもしれない。
理由はともかく、秘密を隠し続ける必要がなくなり、肩の荷が下りてほっとしたのではないだろうか。物語のロブソンは、疫病神が示した道標を拒否し、ゴルゴへの依頼で解決をはかろうとしたが、結局、道標の反対方向へと向かった。ゴルゴも驚く衝撃的なラストシーンに、そこに至るまでの激しい苦悩をみた気がする。
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野原 圭
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