この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第9巻収録。黒人神父・ジャクソンは、師・クイン牧師を殺した人種差別グループの首領を見つけ出し、抹殺してほしいとゴルゴに依頼する。ゴルゴは首領の正体を知っている男・ホーキンスに接触を試みるが、ホーキンスは情報を聞きだす前に殺害されてしまう。そこにはクイン牧師殺害の犯人を捏造しようとする政財界の大物が隠れていた……。脚本:岩沢克
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インパクト抜群なゴルゴな尋問
ゴルゴは『そして死が残った』等でも見られるように現地の売春婦から情報を得ることが度々ある。本作でも売春婦とのやり取りの中で「探し人に酷いことをしないで」と懇願される。ゴルゴが「約束する…」と返すのだがこの台詞こそがみどころだ。何故なら彼の約束ほど信用できるものはないとして読者の心に残るからだ。
そして面白いのが酷いことをしないと約束した相手、ジミーの聞き取りをする際のゴルゴの行動である。金と銃を机に置き「おまえの答えやすい方法で答えてもらう…」からのやり取りはインパクト抜群。銃をとろうとするジミーを殴打し銃を突きつけ、「こちらを選ぶらしいな…」と皮肉の利いた台詞を言うゴルゴ。この程度は酷いことの内に入らないらしい。
善良な黒人と横柄な白人警官
登場人物で注目したいのは、ゴルゴをいい意味で引き立ててくれる二人だ。一人は冒頭に登場する新聞売りの黒人少年である。ゴルゴが新聞を買おうとした際、銃撃を察知したゴルゴは少年を突き飛ばし命を救う。少年がお礼を言おうとした時にはすでにゴルゴの背中は遠くへ見えるのみ。
この少年は出番こそ少ないものの救える命は救い何も言わず去っていくゴルゴの雄姿を引き立てる名脇役である。次に紹介するのは典型的な差別主義者の白人、キンバリー署長だ。ゴルゴを尋問する際「色付き野郎!」と差別用語を発しながら殴るシーンはインパクト抜群。前述の少年と正反対の立ち位置に存在する名悪役だろう。
人種差別問題、再び
世間でBLMが叫ばれている2020年現在。黒人による白人警官への過激な報復から始まり、タイムリーな印象を与える本作。注目点は実はその過激な報復が人種差別主義者の罠だという点だ。襲撃事件の前ページには大量の黒人がいる描写があるため読者のミスリードを誘う構成になっている。
いい意味で読者の予想を裏切ってくれるのだ。このように本作のみどころは白人と黒人を全体でいがみ合わせたい差別主義者と、彼らへ一矢報いたい黒人達の思いが複雑に絡み合う物語構成である。また本作を読むにあたって、同じく人種差別問題を主軸として盛り込んだ『デスマスクの肖像』を読むことで当問題をより深く知ることができる。併読をオススメしたい。
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小摩木 佑輔
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