この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第124巻収録。ベトナム帰還兵のウィリーとカッツが謎の不審死をとげた。死因に疑問をもった親族が調査した結果、ベトナムで同じ部隊にいた仲間たちも次々と亡くなっていることが判明。共通点は死の直前、セントジェームス陸軍記念病院で、同じ部隊の軍医だったトラヴィス医師から治療を受けていることだった……。
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この作戦の名前はあまりに皮肉すぎる
冒頭ベトナム戦線の臨場感迫る作画に圧倒される。この作戦名「ロングバケーション2」をストーリーに沿って翻訳すると「永遠の休暇」ということになり、こんな休暇はどんな人間でも願い下げだろう。
日本でも、最近でこそPTSD・心的外傷後ストレス障害という言葉が広く知られるようになったが、簡単に言えば、耐え難い恐怖体験後の諸症状ということである。その中には怖い記憶を自ら脳内に封じ込めるということも含まれる。トラヴィスはその作用を悪用して、人為的に記憶を封じる、という精神科医として許されざる行為をしているのだ。

珍しいゴルゴのちょっとだけ変装スタイル
今回は「フリーライター」を名乗っているためか、黒縁眼鏡と口ひげという、わずかな変装でターゲットに近づいているが、普通、ライターは箸より重い物を持たないので、これほど鍛えられた男は少ないと思われる。
しかし、ライターは兼業の場合も多いので「ジムのトレーナーもしている」など、言い訳には事欠かない。ある意味便利な職業でもある。あらゆる分野に精通し、メイクアップのプロの手を借り、医者やシェフなど、どんな風にも化けられるゴルゴだが、さすがに難しいと思われるのは、競馬の騎手、植木屋そして女装・ゴル子である
いつの世も部下が苦労するのはアホな上司
国会議員にもなったプロ野球選手が、かつて現役時代「ベンチがアホだと野球ができない」という趣旨の発言で物議をかもしたが、本作はまさに「指揮官がアホだと兵隊は無駄死する」の典型例を示している。
特に始末に悪いのは、指揮官が軍関係の名門出身者であるため無能なくせに功を焦り、無謀な作戦を遂行することだ。敵兵は「あいつら何やってんだ?」「さあ 何でしょうね」「気の毒にな」と、同情すらしていたかもしれない。自分の落ち度を隠蔽しようとする、小心で姑息な指揮官にはどこかの国の指導者だった人の顔が重なってしまう。

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野原 圭

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