この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第17巻収録。ゴルゴへの弟子入りを拒否された過去をもつ、“ゴルゴ信奉者”ラメド・ユースフ。彼は現在、武器商人のサミー・コルダの用心棒をしている。そんなある日、コルダの身辺にゴルゴが現れる……。ゴルゴが登場したことによって右往左往するユースフ達の勘違いで、物語は予想外の展開をみせる。脚本:岩沢克
スポンサーリンク
アウトローにしては純情すぎるユースフ
一話限りで死んでいく小物達の生き様も『ゴルゴ13』の魅力の一つだが、本話の語り部といえるユースフも、良くも悪くも人間臭くて目が離せないキャラの一人だ。成り上がりを夢見てゴルゴに弟子入りを志願するも、呆気なく振られた過去を持つ彼は、紆余曲折を経てゴルゴと対決することになるが……。
雇い主の愛人・セシリアに横恋慕しているユースフだが、彼女に思いを伝えるでもなく、力ずくでものにするでもなく、密かに彼女の写真をロケットに入れて持っているだけという純情さが憎めない。そんな彼がセシリアの仇討ちを果たす結末は必見だ。
死にゆく男にゴルゴが掛けた最後の温情
仮にも自分を倒そうと狙ってくるユースフに対し、今回のゴルゴは、わざわざ敵の正体を教えたり、セシリアの仇を討つチャンスをやったりと、いつになく情けを掛けているのが興味深い。それは取りも直さず、ゴルゴは彼のことなど脅威とも何とも思っていないということであり、ユースフにとっては屈辱だろうが……。
彼がプロの世界で生きていけるようなタマではないことはゴルゴにはお見通しのはず。どうせ死ぬのなら、最後に惚れた女の仇くらいは討たせてやろうという温情、そして何よりセシリアの思いをも汲んだゴルゴの気遣いが光る一幕だった。
悪の世界に生きながらどこか純粋な者達
愛憎渦巻くエピソードでありながら、本話がえもいわれぬ爽やかさをも併せ持っているのは、出てくる人物達が皆どこか純粋であるからだろうか。先述のユースフは言わずもがなとして、彼の雇い主であった武器商人のコルダも、セシリアには純粋な愛情をもって接していたように見える。
そのセシリアにしても、お腹の子の父親であるコルダの身を本気で案じる気持ちと、ユースフの思いを接して「もう少し早く知り合えていたら」と言った気持ち、どちらも嘘ではないだろう。そんな彼らも最後は皆死んでしまうのが、本作の切なさであり魅力なのだが……。
この作品が読める書籍はこちら
東郷 嘉博
最新記事 by 東郷 嘉博 (全て見る)
- ゴルゴ13:第536話『神の鉄槌』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第552話『受難の帰日』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第535話『森と湖の国の銃』のみどころ - 2024年9月19日