この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第67巻収録。サンパウロの高層ビルで大火災が発生。現場からは144体の遺体が発見されたが、不可解な事に2体の射殺死体が混じっていた。担当刑事のセルジオ武藤は、唯一の生存者である女性・モラレスから事情を聴取。すると彼女の他にももう一人、東洋人の生存者がいたことが判明する。
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ゴルゴも避けられないアクシデント
高層ビルの火災は消火設備や建材の不備など様々な問題をあぶり出すが、それが露呈したところでもう遅い。屈強なゴルゴとはいえ「容疑者トウゴウ」で不運にも雪崩にあったように、災害に際しては避難するしかないが、ピンチをどう切り抜けたのか。アクシデントに遭遇しない人生ほぼあり得ない。
そしてそれにどう対処していくかが生死を分けることもある。アクシデントに対処するには、日頃から様々な危機意識を持ち、知識を蓄え、生き延びるための工夫ができる想像力を養わなくてはならない。そんなことを改めて考えさせられる作品である。
必見、これぞ火事場のバイブル
火災からの生還者・モラレスを通して火事場からの避難を詳細に解説している。評論家の故・半籐一利氏も近年、漫画の及ぼす影響力を重視し戦争体験を漫画化して次世代に伝えていく、という試みをしていたように、形ばかりの避難訓練で「火事の際の注意点」などを講釈されるより、このように臨場感に満ちた作画による具体的な対処法のほうがよほど印象に残る。
火事は火による火傷もさることながら、熱い煙やガスによる気管や肺など呼吸器のダメージにも注意しなければならないこと、熱による脱水を避ける方法など役立つ内容が満載である。
武藤の無茶振りは見事空振り
モラレスは警察に示されたゴルゴの写真を見ても「覚えていない」と誤魔化すが、あれだけ印象深い風貌に加え、命の恩人ともいえる人物を忘れるはずがない。警察に追われている人物だとしても恩人を「売る」のは意に添わなかったのだろう。
ただの極悪人なら、足手まといになる女を助けるはずもないと思ったのかもしれない。警察官・武藤の強引な捜査は、殺人犯は殺されても仕方ない「目には目を」と言う言葉があてはまる。確たる証拠もなくゴルゴを犯人ときめつけ、正当防衛を口実に始末しようとしたが、見事に肩すかしを喰ってしまった。
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野原 圭
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