この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第209巻収録。ミャンマーの政治家・アウンサンスーチーをモデルとした政治サスペンス。本作では憲法を改正したのち、大統領に上り詰めるまでを描いている。大統領に就任するにあたり、息子に危害がおよぶことを危惧した彼女は、ゴルゴをも巻き込んだトリックを考えるが……。
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民主化を目指す女傑の終わりなき戦い
本話のテーマはミャンマーの民主化運動。作中に国名こそ出ないものの、依頼人のワウンスンサーシーは明確にアウンサンスーチー氏をモデルとしており、経歴や境遇も現実とほぼ一致している。本話の半年前の2016年4月には、作中同様、スーチー氏が国家顧問に就任し、「事実上のスーチー政権」が誕生していた。
しかし、その後、2021年の軍事クーデターで軍部が政権を奪還し、スーチー氏は懲役・禁錮計33年の判決を受けて収監。2023年7月には刑務所から自宅軟禁に切り替えられたというが(※)、彼女と国の命運は未だ混沌の中である。※出典:BBC NEWS JAPAN『アウンサンスーチー氏、住宅での軟禁に移行 軍事クーデター後に収監の刑務所から』(2023年7月28日)
特殊メイクによる決死の替え玉作戦
ワウンスンサーシーの息子・アンドリューと、信奉者ミョウチの、変装マスクを用いた決死の替え玉作戦が印象的な本話。協力者として登場するのは、『ティモールの蹉跌』や『リプレイ』でも活躍した、特殊メイク・アーティストのトマス・フィール。
ゴルゴを「一番のお得意様」と言う彼だが、今回はゴルゴの与り知らぬ経緯で、しかし結果的に彼の任務と密接に関係する形で仕事を果たすことになるのが面白い。この計画に文字通り命を捧げたミョウチの覚悟も見所。不治の病で死を待つばかりだった彼にとっては、民主化の人柱となれて本望だったに違いない。
依頼人や協力者とゴルゴの継続的な関係
サーシーの依頼の完遂後、今度はアンドリューの暗殺阻止と黒幕の抹殺を引き受けるゴルゴ。同じ依頼人から立て続けに受任するケースは珍しいが、したたかにして誠実なサーシーはゴルゴにとっても付き合いやすい客だったのかもしれない。
一方、先述のフィールとゴルゴの関係も興味深い。『ティモールの蹉跌』で、血が出ないことで変装を見破られたのを受けて、ゴルゴはマスクの改良を彼に依頼していた模様。それが今回の替え玉作戦で役に立ったわけだが、ダメ出ししながらも彼を使い続けるあたり、ゴルゴは彼の腕を相当高く評価しているようである。
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東郷 嘉博
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