この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第209巻収録。米国に千数百も存在するといわれる政府系調査機関にスポットをあてた短編。別々の調査機関に勤務する夫婦が、偶然にも同じ人物を追っていた。テロの可能性があると報告しても取り合ってもらえない二人は、自分たちでホシの正体を暴こうとマイアミへと旅立つが……。脚本:ながいみちのり
スポンサーリンク
偶然からゴルゴに迫ってしまった者の悲劇
好奇心や功名心からゴルゴに深入りしようとした者は、手痛いしっぺ返しを食らうのがお決まりだが、本作はその中でもいささか不運が過ぎるといえるケース。ラブバードを思わせるおしどり夫婦の二人だが、それぞれの職務の中で偶然にもゴルゴの手掛かりを掴んでしまい、彼の恐ろしさを知らぬままに、その正体を暴こうと動き出してしまうのだ。
近所の紳士がゴルゴを追うエージェントだったことも、互いにとっての不幸だった。「俺にとっては結果が全てだ」というゴルゴの言葉通り、意図せずとも彼の秘密に迫ろうとしてしまった時点で命はないのだ……。
米国ならではの複雑なエージェント事情
本話に関しては、偶然が招いた悲劇という見方が一般的と思われるが、一風変わった考察もある。それは、図らずもゴルゴに迫ろうとするジョンやメアリーの動きを不安視して、いずれかの組織の上層部が、先回りしてゴルゴに部下を「売った」のではないか、というもの。
異説ではあるが、全くないとも言い切れないのが諜報機関の恐ろしさだ。州ごとの自治権が強いアメリカでは、軍や警察に関しても、連邦政府の指揮系統に入らない州・自治体規模の組織が多数並立している。隣人が知らない組織のエージェントというのも、かの国では珍しくないのかもしれない。
読者も知らないゴルゴの活動の一端
世界中にアジトや協力者を有し、神出鬼没の暗躍を見せるゴルゴ。本話では、ジョンとメアリーの調査機関での職務を通じて、知られざるゴルゴの活動の一端が垣間見える。本人や武器の密航手段と思われる小型貨物船や、世界各地に設置されては使い捨てられるアジト。
勿論それは、彼の移動・潜伏手段の一部に過ぎず、いつでも切り捨てられる文字通りの「尻尾」に過ぎないと思われる。仮に組織ぐるみで本格的に追ってくる所があれば、政府に手を回して止めさせるだろうし……。結局、泡沫組織の一つや二つは、ゴルゴには取るに足りない相手ということだろう。
この作品が読める書籍はこちら
東郷 嘉博
最新記事 by 東郷 嘉博 (全て見る)
- ゴルゴ13:第536話『神の鉄槌』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第552話『受難の帰日』のみどころ - 2024年9月19日
- ゴルゴ13:第535話『森と湖の国の銃』のみどころ - 2024年9月19日