この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第144巻収録。国産ロケット打ち上げを推進する宇宙開発事業団の井村は、国交省の大物である天城に開発資金の援助を申し出る。しかし国内農業の発展を願う天城は、ある目的でゴルゴにロケット打ち上げが延期になるような工作を依頼する。一方、事業団にスパイとして潜り込んでいた佐藤は、ロケットにある秘密を隠しているのだった……。脚本:夏緑、秋田茜
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宇宙開発と農業との密接な関係
読み終わると絶妙なタイトルに思わず唸ってしまったが、宇宙旅行も現実化してきた最近、宇宙にはロマンがある、などと思って空を見上げていたら人が降ってきた、という、冒頭のような過激な場面には遭遇したくないものである。
気象予測など今や宇宙と日常生活は切り離せない関係にあるが、空ばかり見て足下がおろそかになっては困る。現役時代様々な野心も抱いただろう天城のたどり着いた結論がこれである。ロケットの鍍金・メッキが剥がれるのも問題だが、国家を侵食する、より危険なメッキをゴルゴの銃弾がはぎ取り邪悪な正体を暴く。
一蓮托生を覚悟する代議士の妻
「あなたには主人の現役時代ずいぶんお世話になりました」と、天城夫人がゴルゴに三つ指ついて挨拶している場面をみて、代議士夫婦に熟年離婚がない理由が理解できた。裏も表も知り尽くし、墓場まで持って行く秘密を共有する一蓮托生の関係は、夫婦というより戦友に近いのだろう。
女性蔑視など数々の問題発言で物議をかもした元代議士は「あなたのおかげで私がどれだけ地元で頭を下げて苦労しているかおわかりですか」と奥様に言われ、返す言葉がなかったという。彼は奥様の依頼でゴルゴから狙撃されないよう、しっかり尽くした方がいい。
つきつめていけば最後は皆農業に行き着く
評論家の吉本隆明は、晩年「人間はお腹いっぱい食べられれば良いのではないか」と言っていた。菅原文太、田中民、思考を突き詰めた人は皆農業に行き着いている。
天城家に向かう車中で井村が、車の先を走る郵便配達を見て「非効率もはなはだしい、そんなところにムダに使う金があれば日本の宇宙競争力をもっと強くすることが…」と食を担う農地を目にしながら吐き捨てるように言うが、宇宙開発の目的を見失っていることに大きな問題がある。ところで、あの郵便配達はたぶんゴルゴだろう。田舎の家を怪しまれずに訪ねるには一番の変装だから。
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野原 圭
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