この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第17巻収録。KGBからロケット工学の権威・タミノフ教授の殺害を依頼されたゴルゴ。しかもその依頼は「教授が持つ銀時計を貫通して、教授の心臓に弾丸を撃ち込んでほしい」という奇妙なものだった。一方、MI6はミサイル工学の機密情報を盗み出そうとしているKGBの工作員「稲妻(モルニャ)」の特定に四苦八苦していた……。脚本:岩沢克
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けじめをつけるゴルゴ
最初のみどころはターゲットを仕留め損なうシーンだろう。『地獄からの生還者』では側転しながらの不利な体勢から複数の標的を射撃し、約1名を仕留め損なっている。が、本作のそれは性格が違う。なにしろ依頼人が提示した条件を遂行できなかったのである。狙撃後、ほぼ無傷なターゲットに読者は度肝を抜かれることだろう。
続くみどころは依頼に失敗した後のゴルゴの行動である。作中で彼への依頼に嘘が含まれていたという事実が発覚するため、ゴルゴ流のけじめのつけ方、相手の思惑をぶち壊す、をやってのけるのだ。本作のラストを飾るにふさわしいみどころと言えるだろう。

ゴルゴの狙撃で無傷な男、タミノフに注目
登場人物の描写で秀逸なのはアレクサンドル・タミノフ教授とその護衛を務める男・ローレンスだろう。ローレンスは一目でゴルゴを危険人物と見抜き、抜き打ちの身体検査をするほどの観察眼の持ち主だ。ゴルゴが非武装だったから難を逃れたものの、ゴルゴとローレンスのやりとりはみどころの一つである。
タミノフ教授は本作でのゴルゴのターゲットだ。狙撃されたのにも関わらず、無傷で難を逃れている。これは依頼主の巧妙な罠ではあったのだが、「ゴルゴ失敗」のインパクトは凄まじい。ローレンスでさえ死んだと思った教授が無傷なのを見て、驚愕の表情を浮かべている。本作では物語の中核を担うこの二人に注目すべきだろう。
誰が敵で誰が味方なのか、暗中模索の物語
脚本のみどころとして挙げたいのは、子供を使った依頼人との接触だ。『ビッグ・セイフ作戦』と比較して読むと面白いのだが、本作のほうが回りくどさがなくスマートさが増している。時がたつにつれゴルゴが成長しているというのを感じられるシーンだ。
そして最大のみどころはゴルゴがタミノフ教授暗殺に失敗した事実を、偶然耳に挟むシーンだろう。その際のゴルゴの険しい顔は『帝王の罠』で見せた表情とはまた違った険しい表情を見せるのだ。そして極めつけはそのシーン以降、ゴルゴは一言も言葉を発さなくなるのである。胸に秘めた想いを外に漏らさないかのように、だ。是非、その秘めた想いを本作で確認してほしい。

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小摩木 佑輔

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