この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第1巻収録。冒頭から背後に立った娼婦に鉄拳を喰らわせるゴルゴ。代名詞ともなる「俺の後ろに立つな」のシーンから始まる記念すべき第一話。元ナチ親衛隊長のミューラーは、ドイツが大戦中に偽造した英国ポンドの偽札を大量に隠匿していた。ポンド価値の暴落を危惧したイギリス諜報部は、ミューラーの抹殺をゴルゴに依頼する。
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ゴルゴ13、世に生まれ落ちる
1969年新春、ビッグコミックにこのエピソードが公開された。ビッグコミック自体、半年前に創刊されたばかりの新進気鋭の漫画雑誌だった。当時、雨後の筍のように青年誌が創刊されていたという。大人が読むのに耐えうる、妥協のない漫画雑誌が求められていた。
ビッグコミック創刊時の連載陣は手塚治虫、石ノ森章太郎、水木しげるなど豪華という言葉では言い表せないほどの大御所が揃っている。そんな名だたる漫画家のなかで、編集者がまっさきに連載のオファーをしたのがさいとうたかをだったと『ビッグコミック創刊物語』で語られている。ゴルゴ13は徹頭徹尾大人のための作品だ。第一話からすでにその姿勢は強く伝わってくる。
おしゃべりゴルゴ、ニヒルなゴルゴ
さんざん言われていることだが、このビッグ・セイフ作戦のゴルゴはよくしゃべる。ニヒルな笑みも見せる。あげくに依頼者に向かってジョークすら言ってみせる。初登場シーンは女性、しかもゴルゴに敵愾心もない無抵抗な娼婦を殴るといういかにも無頼者めいた様子を見せながら、反面見張りを叩きのめしに行くだけにもトレンチコートを羽織るという紳士の仕草もあり、ゴルゴという男の奥行きの深さが伺える。
ゴルゴがよく話すのは連載開始から割合短い期間だけで、早い段階で今なじみ深い無口で氷のように無表情なゴルゴが確立している。そう思うとおしゃべりなゴルゴは貴重で親しみが湧くような気がする。
ゴルゴの醍醐味は依頼の完遂
狙撃のために巨大金庫室をセスナで爆破して侵入経路を作るなんてダイナミックな展開に、読者は度肝を抜かれたのではないか。今ならゴルゴが依頼の完遂のためには如何に手段を選ばないかというのは読者も知るところだが、第一話ではそうではないのだ。
ゴルゴについての知識がゼロの状態でこの第一話を読んでみたかったと思わずにはいられない。昭和から平成、令和になった今読むとさすがに舞台背景が遠くなってピンとこない描写も多い。だが、ゴルゴの本質であるプロフェッショナルの生き様は50年前のエピソードからも伝わってくる。
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大科 友美
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