この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第16巻収録。COFO(黒人の人権を守る議会)の幹部・クリストファー・ドレイクは、その裏では白人至上主義者の組織・KKK団員に属し、COFOの同志たちをKKK団に売っていた。COFOからの依頼でドレイクの狙撃を完遂したゴルゴだったが、なぜか地元警察の非常線が張られており、しかも警官はゴルゴの名前を知っているのだった……。脚本:K・元美津
スポンサーリンク
人種差別の地でのミッションの難しさ
黒人の首吊り死体という凄惨な幕開けで物語は始まる。実際にはもっと残虐な状態も多々見受けられたに違いない。かつてアメリカ南部を黒人が旅するための「グリーンブック」というガイドブックがあった。
もちろんただの旅行案内ではなく、黒人の泊まれる宿、食事できる場所など、いわば彼らが安全に旅行するためのバイブルであり、記載以外の場所では白人からの迫害を受ける覚悟をしなければならない。東洋人も黒人ほどではないが、差別の対象であり、そのような地でのゴルゴのミッションは、逃走ルートの確保が課題であることを示している。
恐るべき装束の始まりはコスプレだった
作中、KKK(ク・クラックス・クラン)についての詳細な説明が簡潔にまとめられている。それによれば、事の始まりは若者の他愛ないおふざけだったというから驚きである。長く奴隷として扱われてきた黒人たちは充分な教育を受ける機会がなかったことから、迷信深くなってしまい、ハロウィンのお遊びのような装束に震え上がってしまったのだろう。
それを利用して、人々の心に恐怖を植え付けていった狡猾な企みには怒りを禁じ得ない。日本では3Kはきつい・汚い・危険の略語として知られるが、どちらの3Kもあまり歓迎できない内容である。
断罪される戦略的裏切り
現代でも黒人に生まれアメリカに暮らすことは容易ではない。特に警官に対する態度は幼少時から厳しく言われる。「同じ行為でも白人なら撃たれないが自分たちは違う」デビィはこのような教育を受けていなかったのだろう。ハリィの「彼らの報復として多数の黒人が血祭りだな。そりゃあひどい殺されようをするだろうよ」
というセリフが密告の原因を暗示している。ランディは報復を見越していたのだろうが、ゴルゴの逃走ルートを確保せずにそのような行為をしたのは愚かだった。しかし結果的に多くの黒人たちは報復を免れたのではないだろうか。
この記事で紹介した書籍はこちら
野原 圭
最新記事 by 野原 圭 (全て見る)
- ゴルゴ13:増刊第100話『獣の爪を折れ』のみどころ - 2024年8月18日
- ゴルゴ13:第485話『欲望の輪廻転生』のみどころ - 2024年7月30日
- ゴルゴ13:第520話『未病』のみどころ - 2024年7月29日