この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第68巻収録。各国要人の情報をストックしている機関・MC130。その首領であるスタインベック三世が二重スパイであることが判明した。イギリス陸軍省はゴルゴに彼の暗殺を依頼。仕事前にスタインベックを観察したゴルゴは、あまりに無防備な標的をみて、首領は別の人間なのではないかと推理する……。脚本:牧戸次郎
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古式ゆかしき英国ミステリ
ロンドン郊外の陸の孤島にひっそりと聳える古城で執事とたった二人だけで暮らす出自の怪しい貴族。その名前も アルフォンヌ・ルイ・スタインベック三世というから、古式ゆかしき英国ミステリの道具だては十分だ。
ゴルゴファンのみならずミステリファンも虜にする小品である。ストーリーも伏線あり、どんでん返しありとミステリの魅力たっぷりに進められていく。もちろん、ゴルゴの活躍も楽しめるので一粒で二度楽しめるのが今エピソードのミソである。
古今東西、怪しげな貴族の血統を主張したり、末裔を騙る詐欺師は後を絶たないが、スタインベック三世は有栖川宮家を騙ったようなケチな詐欺師ではない。
伏線の回収と未回収
スタインベック三世がMC130のボスの隠れ蓑に過ぎなかったことはゴルゴの慧眼で伏線回収される。また、根っからの英国貴族気取りなのに、なぜかリチャード卿が紅茶ではなくコーヒーが好きな設定であることの伏線もきちんと回収されてて気持ち良い。
ただし残念ながら、MC130の情報収集の仕組みやスタインベック三世を英国出発まで責任を持たねばならないリチャード卿が英国内での殺害を依頼していることについては回収されない伏線であり。妙な後味が残る。
これぞゴルゴ!なスキッピングショット
古城の小窓が一瞬開いた隙にスキッピングショット(跳弾射撃)でターゲットを始末するゴルゴ。並みのスナイパーにはとても真似できないことではあるが、ゴルゴの狙撃技術を知る我々はいちいち驚かない。
参考までに『110度の狙点』ではモスクの尖塔を跳点に文字通り110度の入射角でもっと難しい狙撃をおこなっているし、『ワイズガイへの道』では特注ベルトのバックルを跳点にありえない(ゴルゴだからありえるのだが)角度での狙撃をこなしている。また、『死角の断面』では狙撃上の入射角の必要性以外に捜査陣をミスリードするために跳弾射撃を行っている。

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片山 恵右

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