この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第150巻収録。べトナムとカンボジアの国境でケシ栽培を仕切っている麻薬業者クンサ。彼は高額で取引される伽羅が、この地に大量に埋まっていることを発見する。そして伽羅をめぐっての抗争が勃発すると、クンサに命を狙われたグエンは、偶然知り合ったゴルゴと結託して反撃に出るが……。
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香道、茶道、華道、優雅な道の行き着く先
香水のコマーシャルのキャッチコピーのように美しいタイトルである。が、紙面から立ちのぼってくる香りはどこか腐臭をはらんでいる。本来、風雅な教養のひとつであったはずの香道が、三宮が眉をひそめるように一部のマニアや金の亡者の集まりになりつつある。
香木を漁るグエン達現地の人間は、それがどのように使われているかなど、想像もつかないだろう。北条にとっても香木はただの金づるでしかない。香道、華道など「道」のつく組織には多額の金銭が巡ることが多いようだが究極はクンサのような「極道」に行き着いてしまうのだろうか。
人を左右する香りの効用
嗅覚は視覚など他の感覚と違い大脳に直結している。それは人体への危険をいち早く察知するためと考えられていて、香が心を鎮めるのもこのためである。香りを題材にした作品には、飲物の香料を巡る攻防を描いた『ドッグマンの鼻』があるが、食物の味は香り半分と言われている。
マグロのトロも、グレープフルーツの香りをつけてしまうと食欲が減退するらしい。アメリカの不動産業者によれば、お菓子を焼いたときの匂いがする家は売れやすい、という話もある。確かに悪臭漂う豪邸より、質素でも良い匂いのする家の方が、はるかに安心だろう。
究極の香りの正体はまさかの物
多くの人が心地よいと感じる香りを凝縮していくと、どのような香りが近いのか実験したところ、何と一日はいた後の靴下の匂いにたどり着いたという。何だかがっかりするような結果だが、結局自分の身体に一番近いものが安全で良い香りと感じるのかもしれない。
香木も、幾多の動植物の死骸とともに長期に渡り地中に埋まっていることを思えば納得がいく。最後にグエンが抱えた香木も、彼の生き血を吸ってさらに人の心を引きつけて止まない妖しい香りをまとうのだろう。美の裏には醜が潜むようにかぐわしき香りと腐臭は紙一重なのかもしれない。
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野原 圭
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