この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第179巻収録。残虐な手段を用いてテロリストから情報を聞き出し、次のテロを未然に防いできたグアンタナモ収容所。が、収容所内の過酷な取調べの実態が露呈、閉鎖命令が下る。職務にプライドをもっていた所長のコーエンは、憎き密告者の特定・暗殺をゴルゴに依頼するが……。
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報復無しでゴルゴを殴れるチャンス到来
タイトルから広大な地雷原の中で壮絶な戦闘シーンが繰り広げられるのかと想像したが、ゴルゴによるグアンタナモ基地内の内通者探しがテーマとなる『バスを待つ人びと』のような心理劇である。
内通者を特定するため、基地内の刑務所に潜入したゴルゴを、リチャードが取り調べを名目に獄中から呼び出してワインやご馳走を勧める場面が面白い。ゴルゴに「酒の臭いをさせて帰すつもりか」と言われて迂闊さに気づくリチャード。さらにゴルゴに「俺を殴れ」と言われたアランだが、思い切り殴れるはずもなく、ゴルゴが自らをボコボコにしている。
拷問より効率の良い取り調べ
ゴルゴは「リチャードの拷問は凄まじいという評判だ」と言うが、スパイに本音を言わせるには、最初は少々荒っぽい手法を取っても、ご馳走や優雅なリゾートのような環境を提供すれば気が緩み、再び暴力を受けるのは嫌になるのではないだろうか。
ただ、アランのいう「下水処理場」という意味は、例えばヨーロッパでイスラム過激派の爆破テロが発生したとき、実行犯逮捕後、約24時間以内にアジトを捜査し仲間を逮捕している、その際の実行犯の取り調べに該当するのだろう。犯人の人権か多数の市民の生命か、社会は厳しい選択を迫られている。
犯人は誰か、それぞれ怪しい3人の容疑者
ゴルゴが内通者をあぶり出す手法が今回のメインテーマだが、最後の詰めで地雷原を利用している。このミッションにゴルゴは「保険をかけさせてもらう」と告げているが、確かにグアンタナモへの幽閉や地雷を利用した作戦のリスクを考えれば当然だろう。
ただ、諜報機関の人間と違って、多くの軍関係者はゴルゴに対し軍人としてリスペクトの感情を持っていて、リチャードとアラン父子も例外ではない。脱出用の軍用ヘリ内で、リチャードから敬意をこめて用意されたワインとご馳走を前に、心おきなく一服するゴルゴの表情は充足感に満ちている。
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野原 圭
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