この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第213巻収録。国際法に違反し、中国が極秘に開発をすすめる核ミサイル「土龍」。土龍開発に最も貢献したのは技術主任の郭だが、じつは郭には共産党に父親を殺された過去があり、その復讐として土龍を上海に落とす計画があった。郭の弟・猛林は、ゴルゴに計画の阻止を託すが……。脚本:品川恵比寿
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可愛げのかけらもない危ないモグラ
モグラたたきゲーム、絵本「ぼく、もぐら、きつね」など、土竜(モグラ)は可愛いキャラクターとなることが多い。しかし、このモグラ・土龍ほど可愛げのない、むしろ危険な存在はないだろう。土龍が眠りから覚め、地上に姿を現すとき、人々は途方もない厄災に見舞われる。
観光ツアー客に紛れたゴルゴは土龍が地上に現れることを阻止するべく、死力を尽くすが、中国軍司令官の邪魔が入り、核を搭載したミサイル・土龍が上海へ向けて間一髪発射されてしまう。解き放たれた土龍に対してゴルゴは為す術もないのか、スリリングな展開に息を呑む。
日本ではありえない核兵器見学ツアー
知らない、ということは恐ろしくまた、罪なことでもある。日本人、とりわけ被爆地広島、長崎の人々にとっては、「核兵器」という言葉を聞いただけでアレルギーに近い反応がある。それは核による被爆が、土壌を汚染し、人間に対しては当事者だけでなく世代を越えて及ぼす恐ろしさを体感しているからだ。
中国が重慶の地下核施設を観光地化して見学ツアーを実施し、子供が「かっこいいミサイル」と喜ぶ様子は、まるで黒部ダムの水力発電所を見学しているようである。核爆弾のレプリカまで作っているのには驚きを通り越してあきれるほかはない。
科学者の良心をねじ曲げた不当な圧力
不都合な真実を認めない、罰する、という風潮は、組織において自分が責任を問われることを恐れるが故である。科学者の良心からでた進言を黙殺するだけでなく、当人を罰する、という姿勢は、コロナウイルスを最初に疑った眼科医を罰したことと重なる。
あらゆる社会において、正直者は馬鹿を見る、という実態を改善しないことには郭元仁のように、優秀な技術者を悪魔にしてしまうこともある。党を信じ、技術者として尽くし貢献した郭元仁、党を利用して富を築いた郭猛林。対照的な生き方の兄弟だが、結局同じ末路を辿ることになってしまった。
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野原 圭
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