この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第170巻収録。“スターリンの金塊”と呼ばれる、九千万ユーロにも及ぶ金塊が眠る沈没船が発見された。同時に船が引き上げられると困る勢力も動き出す。船内には第二次世界大戦の史実を覆す証拠となる“あるモノ”が隠されていたのだった……。
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英国情報部の諜報網は現在も世界一
海の底には様々な物が眠っている。第2次世界大戦時のお宝に隠れた、不都合な真実を掘り当てられたカーライル男爵は、ゴルゴに真実の抹殺を依頼する。カーライルは「情報戦で我が英国に勝る国はない」と言っているがイラク戦争でフセインを捜し当てたのは、多分MI6ではないだろうか。
実際に確保したのは米軍だが、そのニュースを世界に先駆けて報じたのはBBCだった。フセインの居所は夫人からの情報らしく「007と出会った女性は正義に目覚める」という噂もあるので、おそらくジェームズ・ボンドが夫人を口説き落としたのだろう。
敵を欺くには味方から、戦争の非情
日本の戦国時代、各勢力は「忍びの者」現代でいう工作員を使っていた。敵を欺くため、ときには自分たちの有力な手駒を犠牲にすることもあったらしい。コベントリー空襲についても同様な事情だった。
ドイツの暗号エニグマ解読については、史実に基づいた映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』に詳しいが、コベントリーだけでなく自軍の輸送船や戦艦なども解読の事実を伏せるため、少なからず犠牲になったという。日本軍による真珠湾攻撃もアメリカは事前に察知していたという話もあり、戦争の非情を思い知らされる。
女は今を生き、男は過去に生きる
カーティスの母親の表情は、息子がコベントリー空襲に隠された事実について調査することを喜ぶどころか、むしろ憂いている。そして証拠を失い意気消沈する息子に「もう過去のために自分の人生をむだにするのはやめておくれ」と言っている。
作家の池波正太郎は小説の中で、しばしば「女という生き物は過去も未来もなく今を生きている」といっているが、母親の考え方はまさしくこれに合致する。そして、コベントリーの犠牲がなければ戦争はさらに長引き多くの命が失われたという事実は、戦争は絶対に回避すべきという教訓を語っている。
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野原 圭
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