この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第132巻収録。パリの地下鉄でスリを働くパトリックと少女サラ。ある日、サラは掏った財布の中から奇妙なメモを発見する。その日から謎の人物から尾行され始めたサラ。ついには相棒のパトリックまで殺されてしまう。じつは、そのメモには驚くべき暗号が記されていたのだった……。脚本:夏緑
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少女キャラクターの激変にみる時代の変遷
物事は得てして計画通りに進まないことのほうが多い。そしてある種の能力が試されるのはその場合なのだろう。ゴルゴが関わる陰謀に偶然巻き込まれてしまった家出娘のサラ。
想定外の事態にゴルゴが彼女を囮に標的を引き寄せようとする、という話だが、少女サラと『Gの遺伝子』『ゴルゴダの少女』に登場する美少女ゴベールのキャラクターとの違いに隔世の感がある。少女が「守られる、か弱い存在」から「強くて格好いい存在」でもあり得ることが受容され、エンタテイメントとして人々に支持され心をつかむ時代になったということだろう。
ゴルゴの新技?ドア越しのカウンセリング
ゴルゴがホテルの一室でターゲットと対峙する場面が面白い。サラはバスルームに閉じこもり、2人の会話と物音しか聞こえない。思春期の彼女はわけあって、大人の男に不信感を抱き反発している。
しかしそれは、大人の男に守ってほしいという願望の裏返しであることをゴルゴは読みとり、彼女を狙う男に対し「彼女を始末する気なら、まず俺を始末するしかない」という言葉でサラの信頼を得る。その後、銃声が響くのだが、サラの証言は「ゴルゴおじさんは、私を守ろうとして相手を殺した」ということになり、ゴルゴの正当防衛が成立するのだ。
今回は甘いデザートのサーヴィスつき
基本的に、読み終わってほっこりすることを期待する分野ではなく、バーでストレートのウイスキーを飲み終わったような後味のゴルゴシリーズだが、この作品の最後は、ゴルゴと少年の男同士の話の真相が面白い『一年半の蝶』のホットミルクのようなラスト同様、甘いケーキのようである。
しかし、その前に金融関連の複雑なセリフが続き「まだ新たな展開や問題が残されているのか」と必死に頭を使って中身を理解した後に、不意打ちのように設定されているのが憎い。最後までセリフやストーリーに手抜きのない構成には、頭の下がる思いがする。
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野原 圭
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