この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第206巻収録。ゴルゴの遺伝子を受け継ぐ天才少女、ファネット・ゴベールが登場する一編。彼女がゴルゴの実娘ではないかと考えた国防総省は、ゴベールを拉致し、DNAを調べることでゴルゴの弱みを握ろうと画策するが……。制服姿の女学生がゴルゴばりの活躍をする、シリーズ新境地に挑んだ傑作。脚本:夏緑
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最新版のルーツ編
ゴルゴのルーツエピソードのなかで現在最も新しいのがこの『Gの遺伝子』だ。ただこれまでのルーツ物と違い、ゴルゴのDNA等を分析することで彼の血縁者を辿っていくという仕立てになっている。先にオチを言ってしまうが、血液検査や類まれな身体能力からゴルゴの娘として推測されたファネットだが、実はゴルゴから輸血されただけで娘ではなかった。
ゴルゴとファネットの母スザナは肉体関係があったことが描かれてはいる。しかし裏話にはなるが作者がファネット=実の娘というのを否定している。この解釈は自分の想像に過ぎないのだが、ゴルゴはファネットの母の頼みを彼女の命を賭けた依頼と解釈したのではないだろうか。だから血を分け与えてでもファネットを助けたのではと思う。形見となるヴァイオリンを直して10年越しに渡しに来るのはゴルゴの仕事へのこだわりなのか、それともゴルゴの情なのか。

女子中学生のアクションと笑顔
ゴルゴどころかさいとう・たかを作品で制服の女子中学生が大立ち回りをするというのはあまり見た記憶が無い。名作サバイバルも主人公は少年だが、少女がここまでのアクションを決めていたシーンは無かったように思う。何年連載が続いても新しい一面が見られるのがゴルゴの魅力だ。また、私はエピソードの最初と最後に描かれる普通の女子中学生たちの屈託のない笑顔のシーンが好きだ。
ゴルゴではそうそう見られない、ただの女学生たちの天真爛漫な姿がとにかく可愛らしい。ファネットも自分のルーツを知ったことで、前向きに普通の女子としての生活を楽しんでほしい……と思っていたが、彼女は別のエピソードで事件に巻き込まれ、ゴルゴと再会する。レギュラーキャラ化するのか、それも見守りたい。
兎のように臆病だからこそ
ファネットは小屋から逃走している最中「恐怖を感じるほど血が熱くなって力は満ち、感覚は鋭敏に、頭は冷静になっていく……兎のように臆病だからこそ」と己の能力の根底に気が付く。ゴルゴフリークならすぐに気が付くだろうが、この兎のように臆病というフレーズはゴルゴも自らを評して使ったことがある。
輸血や臓器移植で性格が変わるという都市伝説は珍しいものではないが、学術的には否定されている。しかしファネットの身体能力と思考回路はどう考えてもゴルゴのそれを受け継いでいる。それらがゴルゴの血液がなせる業ということは、ゴルゴの持つ血液、そして遺伝子には特別な何かがあるのだろう。もう公式で見られる望みは薄いとはいえ、叶うならゴルゴの出自を見たいものだ。

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大科 友美

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