この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第170巻収録。ODAで得た援助資金を、インサイダー取引で増やす方法で私腹を肥やし、日本企業の支配を目論む中国人・葉子龍。この陰謀を阻止するため、防衛庁の石沢はゴルゴに接触。難易度の高い狙撃を依頼する……。ゴルゴへの新しい連絡方法も明かされる一編。脚本:藤川進
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防衛省と金融庁が力を合わせて国防
日本は縦割り行政で互いに縄張り意識が強いと言われるが、本作のように防衛省と金融庁が互いに力を合わせてくれるなら、心強いかぎりである。ただ、この2人の個人的関係によるものなら少々心細いが。
危機管理に関しては、例えば、麻薬捜査の所管は厚生労働省だが、実際に取引の現場に踏み込むには警察の協力は必須であり、縦割りなどと、のどかなことを言っている場合ではない。本当に必要に迫られれば、できないことなどほとんどなく、要はやる気がないだけの話である。ちなみに日本において、ゴルゴへの依頼担当は防衛省であるらしい。
生体認証も複雑なパスワードも考えもの
葉が資産を預けているケイマン諸島の銀行のアクセスに人指し指の指紋か複雑なパスワードが必要とされているが、ある小説で、殺した人間の指を切り取り、スマートフォンの指紋認証に使いながらその人間が生きているようにみせかけるという怖い話がある。
指紋認証は指を切り取られる恐れがあるし、記憶できないパスワードは本作のようにややこしい隠し方をしなければならない。かつてPLOの議長だったアラファトはスイス銀行のパスワードを自分の記憶にだけ隠していたという。こうすれば、少なくとも味方の裏切りで命を落とすことはない。
日本のマニアックな店はゴルゴに尋ねよ
双龍は一つの体に首が2つある龍を連想させる。当初、双龍とは片岡と葉のことかと思ったが、そうではなかった。一発の銃弾で両方の首をとらねば片方に喰い殺されるという過酷な条件をゴルゴはどうクリアするのか。日本国内にある水槽や観賞魚の店など、知る人ぞ知るマニアックな店の紹介が面白い。
また、神保町の古本街界隈や古書店内のくすんだ雰囲気が、実にリアルに描かれている。さらに日本におけるゴルゴへの依頼方法のひとつが垣間見えるのも興味深く、神保町の古書店の経営はゴルゴによって支えられているのだと感謝したくなった。
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野原 圭
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