この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第145巻収録。雪山での仕事帰り、突然の雪崩に巻き込まれたゴルゴ。救出され、ホテルで意識を取り戻したゴルゴだが、ホテル内で起きた殺人事件の容疑者にされてしまう。雪崩事故で失くしたはずの自分のアーマライトが使われていることを不審に思ったゴルゴは、独自に調査を開始するが……。
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”名探偵ゴルゴ”登場
タイトルは「容疑者トウゴウ」なのだが、本質は”名探偵ゴルゴ”な作品である。崖崩れで外界との物理的な往来ができなくなった山の中のホテル。雪も降り舞台は上々で、いわば閉ざされた山荘モノといった趣きである。
同様にホテルを舞台にクローズドサークル化でゴルゴが関わったエピソードに『ヴィレッジ・ジャック』があるが、あちらはホテルを占拠した武装テロ集団と仲間割れした村の”住人”たちの掃討が主題。今エピソードはひょんなことから殺人容疑をなすりつけられた”トウゴウ”が濡れ衣を果たすべく名探偵よろしく事件を解明していくのが主題である。
ゴルゴの見事な論理とひっかけ
容疑者が濡れ衣を晴らすべく推理していくミステリは世に数多あるが、今エピソードのゴルゴの推理はそれらにひけを取らない見事さである。死亡推定時刻からドクターに疑義の目を持ち、犯人がうっかり口を滑らしたことからスタイン殺害の動機までたどり着いている。
なかでもスタイン殺害にも使われてしまった銃の所在の矛盾を論理的に指摘し、実行犯に矛盾を解消させたこと、その場を押さえて推理を決定的なものにしたこと、これら一連の探偵術には感嘆するしかない。
一流のスナイパーはいざという時のために探偵術も学んでいるのであろうかと思わせる名探偵ぶりなのである。
「俺はたぶんドクターよりも……」
「俺はたぶんドクターよりも多くの死体を見てきている」と死亡推定時刻へのドクターとの見解の相違から、ゴルゴが発する言葉である。それはそうだ。ゴルゴよりも多くの死体を見てきているドクターはゼロに近いだろう。ただしこれは読者である我々には非常に納得性の高い発言なのであるが、登場人物にとってはどうであろう。
なのに!ドクターのクーリッジと警察官のエーベルトは黙り込んでしまう。二人とも後ろ暗いことをしていた引け目かゴルゴが只者ではないことをわかってしまっていたためであろうか。憐れ、最後には逆上してゴルゴに銃を向けてしまいあっさりとやられてしまうのであった。
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片山 恵右
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