この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第14巻収録。黒人による反白人運動が激化していたキングストン。この地を訪れていたゴルゴは、黒人過激派一味の立てこもり事件に遭遇する。過激派のリーダーは、ゴルゴには危害を加えない好人物だったが、人質の白人医師に銃口を向けた途端、ゴルゴは過激派一味を全員射殺してしまうのだった。はたしてゴルゴの真意とは……? 脚本:K・元美津
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黒人に肩入れするゴルゴが印象的
本作のゴルゴは黒人から銃を突き付けられ、素直に逃亡の手伝いをする。ゴルゴが銃を突きつけられて車を運転する姿は、とてもシュールで印象に残ることだろう。ゴルゴは銃を向けられたとき、相手が本気で撃つ気があるかどうかを瞬時に見極めている。これは『ザ・スーパースター』で銃を向けられた際の対応からも明らかだ。
この黒人達はやり方こそ乱暴ではあったが、強い口調の仲間の言い方を正すなど、一線を越えない描写が度々なされている。また医者を人質にとる黒人を、白人から救ってみせるなど黒人寄りの行動が目立つ。これらの行動がゴルゴの目的とどのように絡んでくるのかがみどころとなるだろう。
過激派黒人と医師の運命や如何に
注目したい登場人物は二人いる。一人目はデモの扇動者、ジョニイ・クーガーだ。デモだけに止まらず車両の破壊や警官隊との衝突など、実力行使も辞さない過激思想の持主である。『誕生日に白豚を殺せ!!』ではこのような過激な活動は差別主義者の罠として描かれていた。本作では対照的に彼らが率先して行っている。
口の悪い仲間に代わってゴルゴに礼を述べるなど、話の通じる人物として描かれている。二人目は開業医のコール・フリムル・ロジャースだ。彼は重傷を負った黒人をホテル内で唯一治療できる人物で、このロジャースを中心に様々なトラブルが巻き起こってしまう。この二人が迎える結末を推理しながら読み進めてほしい。
肌の色の違いによる根深い問題
日本人には馴染の薄い問題かもしれないが、本作は『デスマスクの肖像』や『誕生日に白豚を殺せ!!』と同じく、人種差別問題を題材とした生々しい物語が展開される。
作中では“黒ん坊”や”白ブタ”などの差別用語がガンガン登場するが、これらの台詞が人種間の対立構造をよりリアルに描写する仕掛けとなっている。本作を読むことによって人種差別の問題が如何に根深いのか詳しく知ることが出来るはずだ。
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小摩木 佑輔
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