この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。フリージャーナリストの深沢は、取材のため訪れていた北九州の門司で偶然ゴルゴを目撃する。危険を承知でゴルゴを追うことにした深沢は、門司の対岸・下関で、政界に進出しようとしていた元タレントが何者かに狙撃されたことを知り、依頼人を特定しようとするが……。
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寡黙な男の幾十年を超えた「忖度」
政界進出を目論む元タレント・亀崎の暗殺を巡り、お馴染みの深沢記者がゴルゴの「依頼なき狙撃」の謎に迫る本話。事件の背景には、亀崎を愛娘の仇として恨む奥田議員と、ゴルゴの知られざる「友情」があった……。
『感謝の印』や『冥王の密約』など、ゴルゴの私的な恩返しが描写された話は何度かあるが、本話はそれに2017年の流行語となった「忖度」という言葉を組み合わせているのが面白い。恐らくは、人を使うなどして恩人の現況を観測し、恩に報いる機会を静かに狙っていたと思われるゴルゴ。寡黙な彼の人間味が垣間見えるエピソードだ。
古今東西の要素が詰まった本作の真髄
自動運転の取材に始まり、多くの信奉者を集めるタレント議員候補の台頭など、本話には当節話題の要素も多く詰め込まれている。ネットと結びつき、選挙活動のあり方も変わった今、タイムリーに亀崎のような人物を登場させる即応性は流石の一言だ。
一方、奥田とゴルゴの過去の描写では、土木分野の専門会話や、警官の汚職や内戦の激化といった西アフリカの事情も話のエッセンスとなっており、知識の引き出しとしての本作の魅力をここでも味わえる。それにしても、奥田が歳を取っているのにゴルゴの外見は変わらないのは、触れてはいけないお約束だろうか……。
深沢退場か!? 名脇役の衝撃の幕引き
かれこれ20年以上にわたって名脇役を務めてきた深沢だが、本話のラストでは亀崎の信奉者の凶刃に倒れるという衝撃的な展開となる。彼が「死亡フラグ」として思い返すゴルゴとの邂逅シーンでは、ゴルゴが彼の存在をある程度認めて忠告しているような会話も印象的だ。
深沢の生死は定かでないが、素人による刺傷に過ぎず、救急車もすぐに呼べそうなので、助かる可能性もあるだろう。一方、「ゴルゴの娘」ファネットのプッシュに合わせて、姪の美紀に「世代交代」させる意図で深沢を退場させたとの説もあり、いずれにしても今後が気になる幕引きである。
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東郷 嘉博
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