この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第200巻収録。イメージで病状を改善させる「イメージ療法」を題材にした一編。手術困難な脳腫瘍に冒された少年・グレッグ。趣味のバードウォッチングの最中に、ゴルゴの狙撃練習を目撃してしまったグレッグは、その晩からゴルゴに頭を撃ち抜かれるイメージが頭を離れなくなる……。脚本:ながいみちのり
スポンサーリンク
奪われた命と救われた命の物語
作家の池波正太郎は「人は良いことをしながら悪いことをする矛盾した存在」だといっているが、今回のゴルゴのように意図せず命を救っていることも時にはあるのかもしれない。現代医療では治癒が難しい腫瘍を抱えたグレッグ少年がゴルゴの狙撃練習を目撃し、ミッションの銃声を聞く。
ゴルゴに関わってしまったグレッグの運命は果たしてどうなるのか。怪我で動けなくなったグレッグが幼い知恵を必死でしぼり「死んだふり」をしてやり過ごそうとしているのが何ともいとおしい。「俺は、熊、か」というゴルゴの苦笑いが聞こえてきそうである。
未だ解明されていない脳の不思議
いわゆる急所といわれる眉間とこめかみの延長が交錯する脳内部分が、内蔵を制御する視床下部で、グレッグの腫瘍はここに近い。だから手術が難しく、ゴルゴが殺害目的で頭部を撃つときはここを破壊する。脳は未だ最も未解明な臓器であり「病は気から」という言葉どおり、気を病むと確実に病気になる。
他方、難病を患っていても人生に大きな目的があり、その実現にむけて努力を重ねるうちに、病気が完治してしまった例もある。だから、シャーマンの祈祷や神への切なる祈りは、あながち非科学的、と切り捨ててしまうことはできないのである。
死への恐怖が生んだ命への執着
病人の勘は鋭いといわれるが、グレッグはゴルゴを一目で殺し屋と判断した。病による死を受容しているつもりだったが、皮肉なことに間近に死の恐怖が迫ったと思ったとき、彼は死を恐れ、拒否し、生に執着した。
一方、ゴルゴは自分を目撃したのがグレッグであることをつきとめ「安全」と判断し、病院に連絡したからスタッフがグレッグを探しに来てくれたのかもしれない。そして狙撃の瞬間、病室のカーテンが閉まっていることも確認していたからグレッグは恐れる必要はなかった。しかし、腫瘍をピンポイントで狙撃するとはさすがの凄腕である。
この作品が読める書籍はこちら
野原 圭
最新記事 by 野原 圭 (全て見る)
- ゴルゴ13:増刊第100話『獣の爪を折れ』のみどころ - 2024年8月18日
- ゴルゴ13:第485話『欲望の輪廻転生』のみどころ - 2024年7月30日
- ゴルゴ13:第520話『未病』のみどころ - 2024年7月29日