この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第19巻収録。密偵・おまさが、引き込み女のお新に酷似した娘・おすみを発見し尾行する。おすみと同棲中の半太郎は、『殿さま栄五郎』に登場した鷹田の平十の口利きで、盗賊・尻毛の長右衛門の配下となっていた。しかし、おすみは長右衛門と半太郎を二股にかけており……。
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偶然の一致
年明け、使いに出たおまさが見かけた女性と利平治が見かけた男性とが、尻毛の長右衛門一味という繋がりを見せる。長右衛門は本格の盗賊だけあって、手下にもどこか筋の通った者が揃っているのだろうか。本格だけに、こと恋愛においても本格なのか、本格とは言えども恋愛においては鬼畜なのか。
盗賊界の男女関係を描いた作品だ。ドロドロした恋愛劇の結末は悲劇が多いものだが、果たして本作はどうだろうか。よくある男女の恋愛話と思いきや、急展開を見せる鬼平犯科帳の面白さが詰まった作品と言えるぞ。
恋は盲目
男性は恋愛で多くの失敗をする、といった話がある。男性は女性との体の関係と心の関係とを、深く認識出来ないのかもしれないな。多くの男性諸君は身に覚えがないだろうか。
一夜を共にした女性に深入りする男性の話はよく聞くが、その関係だけで相手の全てを手にしたと錯覚してしまうのだろうか。恋は盲目とはよく言ったものだ。自分の想いが勘違いだと分かったとき、激高して女性に手を上げる男性もいると聞く。半太郎の場合にはどうなるだろう。
女心と秋の空
頭と懇ろにも関わらず、それすらも一切表に出さないおすみは、まさに魔性と言えるだろう。その素顔を知った半太郎も、それは自暴自棄になってしまうな。酔った半太郎は薩摩の島津藩士から無礼討ちに処される訳だが、半太郎を心配するおすみの心中を読み取る事は難しいぞ。おすみは半太郎を心から愛していたのか、それとも半太郎とは遊び感覚で接していただけなのか。
まるで秋の天候のようにユラユラと移り気だったとも見えるのだが、本心は全くわからないものだ。肉体的な快楽だけを求めて、男性たちの心をどん底へと落としたのかもしれない。劇画ですら把握が難しい女性の心。我々がそう易々と見抜ける物ではないのだろうな。
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滝田 莞爾
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